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第7話
仕事を終えて帰宅した僕は、春楓がお風呂、春翔がキックボクシングに行っている間に母からの手紙を読んだ。
そこには、僕への謝罪の言葉と、父の病気の事が書いてあり、直接話したいから連絡して欲しいと綴られていた。
「…………」
おばさんにも言われたから。
あまり乗り気ではなかったけど、僕は母に電話をかけた。
「春希!元気だったの?」
「うん、手紙読んだよ」
僕の声に母はとても嬉しそうだったけど、父の話題になると一転して思い詰めたような話し方になった。
「お父さんね、今度の手術、成功率が半分なの。万が一があるかもしれないのよ」
「……そうなんだ……」
父が死ぬかもしれない。
僕は、父を絶対に許さないと思っていたのに、胸が締め付けられるような心地がした。
「あの人には詳しく話していないのだけど、何か感じたんでしょうね、あんたが自分の想いを必死で伝えてきてくれたのに、それを受け入れず自分の生き方を押し付けた事をあんたに直接謝りたいって言ってるの……」
「へぇ……」
母の話す声がだんだん涙混じりになっていく。
「私も、あんたが勇気を出して言ってくれたのに、それをちゃんと受け止めなくて本当にごめんなさい。親として一番してはいけない事をしてしまったと思ってるわ……」
どうして今更。
そんな言葉が浮かんだけど、同時に父から背負わされた重荷を初めて下ろしていいよと言われた気がした。
「お願い、春希、ほんの少しでいいから……」
「…………」
僕は迷った。
でも、父の『お前は俺の息子じゃない』という言葉が頭を過ぎると、会う訳にはいかないと思ってしまった。
「春希……」
「……ごめん、母さん。父さんに会うつもりはないよ。何かあったらまた連絡して」
僕は電話を切ると、スマホの電源を切った。
あの身体も心も強かった父が病気で死ぬかもしれない。
その現実を、僕はなかなか受け入れられなかった。
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