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第11話
『親父ー!!じーさーん!!俺の息子が立派に育つように見守っててくれよー!!』
あの時、ほんの少しだけど、初めて父の涙を見た。
鬼の目にも涙だ……と僕は思った。
『春希!お前もじいちゃんたちに声かけろ!!』
『えっ!?』
『じいちゃんとひいじいちゃんは海の中にいるから、大声出せばきっとお前がいる事が分かるはずだ』
泣いているのかと思ったらいつもの声で言われて、僕は怒られたくない一心で声の限り叫んだ。
『ぼくは、はるきです!!』
『よーし!!よく出来た!!偉いぞ、春希!!』
大声なんて普段全然出さないからすごく疲れたけど、父は笑顔で僕の頭を撫でてくれて、すごく嬉しかった……。
………………………………………………
思い出すうちに涙が溢れて止まらなかったけど、僕は何とか間違えずに弾き終える事が出来た。
『『われは海の子』お送りしました。この曲にも沢山コメント頂いていますね、ありがとうございます。子供の頃、亡き父から教わり、息子に教えて何度も一緒に歌った思い出の曲を聴くことが出来てとても感動したという事で、現在入院中の方からあたたかいコメントを頂いております』
春翔がそう言って、舞台袖に下がる僕の肩を叩いてくれた。
そのコメントが親方が代わりに操作して投稿してくれた父のものだという事はすぐに分かった。
泣きながら歩いていくと、舞台袖に春楓の姿を見つけた。
僕は感情のままに春楓に抱きつき、春楓はそんな僕を今まで通り、優しく受け止めてくれた。
暑くて被り物を脱ぎたかったけど、止まらない涙を見られたくなくてしばらくそれを被ったまま、僕は春楓に寄り添っていた……。
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