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第5話
隣に座る僕は恭一さんたちと談笑する兄の優斗の笑顔を見上げた。
イケメンだけど、やっぱり笑顔が可愛いなあ、と僕まで笑顔になる。
否応なしにチャイムが鳴り、僕は、
「じゃ、また後でね、お兄ちゃん」
「うん、また後で」
ついでに、恭一さん、大貴さんとも、授業中なにかあったら教えてね、の目配せ。
苦手なウインクをしたら、恭一さんが吹き出しそうになってた。
そして、僕は自分のクラスで熱心に授業に耳を傾け、ノートに書き写す。
ピコン、LINEだ。
見ると、次は大貴さん。
『お前の兄ちゃん、怪我した』
『怪我!?』
僕は授業を忘れ、LINEに夢中。
「鈴原、授業中に普通にLINEするんじゃない」
教師の声に、
「兄が負傷したらしいんです、すぐに終わります」
「ああ...お前の兄貴か、大丈夫なのか?」
兄のドジっぷりはどうやら教師たちからも有名らしい。
『消しゴム落として拾ってたらさ、偶然、歩いてた糸原に手を踏んづけられた』
糸原...世界史の教師だ。
『それで、怪我は?』
眉を顰め、険しい顔でLINEをする僕に、重症か?と先生がスマホを覗きこんできた。
『いや、大したことない、と思う』
僕のLINEの内容を見ている先生が、
「...お前は弟なのに大変だな」
肩を落としつつ、僕の肩に手を置いた。
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