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第6話
ちょうど、次の休み時間は昼休み。
お母さんが作ってくれた弁当を持ち、階段を駆け上がり、兄の教室へ。
「お兄ちゃん!」
「おっ、奏斗」
恭一さん、大貴さん、慶太さんも一緒に天気もいいので屋上で食べることにした。
僕とお兄ちゃん、大貴さんも巾着から弁当を取り出し、恭一さん、慶太さんは購買部のパン。
「いただきまーす」
弁当を開けながら、踏んづけられた手はどっちだろ、と兄の手を伺う。
「ん?どうした?奏斗」
「え?ううん」
「にしても、災難だったねー、優斗。消しゴム拾った瞬間、偶然、左手、踏みつけられるとか」
さりげなく大貴さんがふってくれ、左手を見たが、特に変わりはなく、ホッとする。
「うん。まさか、消しゴム落とした瞬間に先生が来るとは思わなかった」
お兄ちゃんが屈託なく笑い、箸で摘んだミートボールを口に入れようとした、その瞬間。
なんということでしょう。
見事にミートボールが箸をすり抜け、屋上のコンクリートの床を転がっていきます。
お兄ちゃんを除く全員が、思わず、
「あっ」
と、声が出た。
拍子抜けして固まっているお兄ちゃんのお弁当にこっそり自分の弁当箱からミートボールを1つ入れた。
1つ消えている筈のミートボールがきちんと4つあることにお兄ちゃんは気づかないまま、昼食を終えた。
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