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第8話
帰宅し、自室に籠るなり、髪の毛を掻き乱し、悩む俺がいる。
しっかりしよう!と思えば思う程、なぜかドジっぷりが加速する。
俺はしっかり者で気立てがよく、そして、優しい弟の奏斗の兄の優斗だ。
兄なのに、兄だからこそ、しっかりしなくてはいけないのに!
今日は朝から箸が逆で、奏斗が教えてくれるまで気がつかなかった。
そして、登校中はスラックスのファスナーが開いたままだった...。
今日は偶然にも母が買ってくれた、世界的な人気を誇る白猫のキャラクター、キテ〇ちゃんがふんだんに散りばめられたボクサーパンツだった。
母がデパートで見かけ、あまりの可愛らしさに衝動買いしたらしいが、弟の奏斗には、
『そんなダサいの履きたくない』
と、拒否され、しょんぼりしていた母に奏斗のぶんも所有し、たまたま履いていた...。
スラックスから見えたパンツを見て、奏斗はきっと、
『ダサいの履いてる』
と思ったに違いない。
だが、顔色ひとつ変えず、ダサい、とも言わずにいてくれた。
優しい弟...。
小学校の頃はよく教科書を忘れた。
休み時間、それを知るなり、奏斗は学年も違うというのに、
『ちょっと待ってて、お兄ちゃん!』
他のクラスから教科書を借りてきては、笑顔で渡してくれた。
だが、次第に、突然、教室に飛び込み、
『教科書、貸してください!』
と頼み、
『ありがとうございます!』
と笑顔で受け取る奏斗にキュンキュンするαの生徒たちが生まれたことを知った。
奏斗を待ち侘びる生徒たちがいることを知ってからは、登校の前夜、指差し確認を何度も繰り返し、教科書を忘れないよう努力し、事なきを得た。
気立てがよく、しっかり者でそして、優しくて可愛い、弟の奏斗に変な虫がつかないよう、俺は探偵を雇っている。
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