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第17話

「頑張ってくださいね、慶太さん!」 こんなに小柄で華奢で華やかな慶太さんが力士を目指し、相撲に憧れているなんてと僕は応援しよう!と笑顔で慶太さんを見つめた。 「ありがとう!奏斗に話して良かったあ!」 まさか僕は慶太さんがお相撲さんがタイプでなかなか誰にも理解されない為、僕に理解して貰えたと思い、喜んでいるとは知らない。 なにも知らない僕は慶太さんの無邪気な笑顔が眩しかった。 「僕もです。まさか、慶太さんが兄の監視に協力してくれるなんて」 僕たちはすぐさまLINEを交換した。 微妙に僕と慶太さんの思惑が違っていることは当時、僕は気づく筈もなく。 「でも、どうして奏斗、優斗を監視してるの?」 僕は少し躊躇いがちに話した。 「....兄は昔からドジで不器用なんです。下手したら、悪い男に騙されそうで」 うーん、と慶太さんは小さく唸った。 「まあ、優斗、かなりドジだもんね、気持ちはわからなくないかな」 「....でも、今日、兄、変なんです」 きょとん、と慶太さんが僕を見る。 「変って?」 「全くドジがないんです。なんかこう、完璧というか....。昨夜、筋トレしてましたから、頭をぶつけたんじゃないか、て心配で....」 「...確かに。今日の優斗、いつもと違うかも。しばらく様子、見た方がいいかもね。恭一と大貴にもこっそり伝えとくね」 にっこり、可愛らしい笑顔を向けた慶太さんが頼もしく思えた。 そうして、僕たちは並んで廊下を歩き、兄の教室へ戻る。 遠巻きに僕たちを眺める生徒達がいた。 慶太さんの美貌に釘付けになっているのかな、と思った。 華やかな美貌の持ち主の慶太さん。 力士がタイプで相撲の話しになると止まらない慶太さんと、まさか僕は自分のファンクラブがあるとは知らない。 周りは異質な二人が並んで歩く姿に目を疑い、無言なままで凝視しているとは勿論、僕は知る由はない。

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