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第20話

食事もままならず、俺、優斗は早々と風呂を済ませ、勉強机で項垂れた。 触れるだけとはいえ、弟の奏斗の唇にキスをしてしまうとは....。 あまりに無防備で可愛い寝顔だからって、俺もファーストキス。 奏斗も寝てる間に兄にファーストキスを奪われたことになる。 (なにをやってるんだー!俺はーーー!!!) 頭を抱えていると不意に部屋がノックされた。 「お兄ちゃん、大丈夫....?」 不意打ちの奏斗の声に体がビク!と跳ねた。 「夕飯もほとんど食べていなかったし....」 「....ごめん」 (....お前のファーストキスを無意識に奪って) 続きが出てこない。 またもや不意打ちで、近づいてきた奏斗が額に手を置き、またもや、ビク!と飛び上がりそうになった。 「....熱はないみたい」 (....熱?) 突然、奏斗に肩に手を置かれ、向かい合わされ、奏斗の真剣な表情を見上げた。 「....病院、行こう!お兄ちゃん!」 「びょ、病院....?」 こくん、と神妙な面持ちで奏斗が頷いた。 「....検査してもらおう?僕からお母さんには話すから」 「検査....?」 奏斗の凛とした瞳を見つめ返す。 ....そうか。 思わず、奏斗の唇にキスしたくなった衝動はもしかして、何かしらの異常からか....? 奏斗はまた、年中ドジな兄が完璧すぎて不審に思っていたが、帰宅後も食欲も元気もない兄の優斗が、昨夜の筋トレによるものだろう、と考慮してのことだった。

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