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第21話
翌日。
朝日も眩しいが、Tシャツにデニム姿の奏斗の笑顔も眩しい。
「じゃあ、お母さん、行ってくるね!」
俺たち兄弟は学校を休み、電車に乗り、総合病院に向かった。
車窓からの景色を互いに眺めながら病院へ。
CTやらMRI検査、血液検査、あらゆる検査に回された。
「徹底的に調べてください!」
奏斗の頼もしい一言は、俺がドジすぎるから、なのか、まさか、実は起きていて、キスをされたことに勘づいてるとかないよな....。
膝に置いたリュックを抱く、隣の奏斗をチラリ。
奏斗は行き交う人々や入院しているらしき患者の姿をぼんやり眺めている。
そうだ、と俺は咄嗟に閃いた。
「奏斗はさ」
「うん?」
隣の奏斗が俺を見る。
「ふぁ、ファーストキスって、い、いつ?」
その瞬間、奏斗の顔が見事なまでに真っ赤になった。
「な、なにいきなり」
「いや、ど、どうなのかなって....」
「ま、まだだよ」
照れくさいのか、それとも、俺を思い、偽っているのか、どっちだ....。
奏斗は俯き、リュックをぎゅっと抱えている。
「お、お兄ちゃんは?」
まさかの奏斗からの質問に、
「お、俺は....」
困惑が隠せない俺を上目遣いでチラチラ奏斗が見上げてくる。
「....まさか、もう済んじゃったの?ファーストキス....」
奏斗の唖然とした顔と共に、俺の名前が受付から呼ばれ、案内されるがまま、診察室へ入った。
緊張しつつ、医師の前に座る。近くの丸椅子にはこれまた真剣な面持ちで固く握りしめた拳を膝に置いた奏斗がいる。
「特に異常ありませんね」
俺以上に、何故か、奏斗が目を丸くしている。
確か、この作者はαがΩに変異したとかいう話しを書いていた覚えがある。
「....αに変異している、とかはないですか...?」
Ωの俺がαに変異し、Ωの奏斗に欲情した、とか....?
「心配なさらなくても変わりありません、Ωですよ」
奏斗がきょとん、と俺を見る。
「....どうしたの?お兄ちゃん」
「え、あ、いや....」
「17歳となれば多感な年頃ですからね、大いに青春し、悩んでください」
アハハハと医師は見透かすように笑い、俺、優斗は身をすくめた。
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