28 / 44

第28話

僕はずぶ濡れの兄の手首を掴み、 「先生!欠席します!」 堂々と宣言し許可を得、兄を僕のクラスに連れてきた。 タイムリミットは一時間。 僕のクラスはグラウンド、兄のクラスは体育館。 生徒たちが戻るまでに全身ずぶ濡れな兄をどうにかしなきゃ...。 「ごめんな、奏斗。また、やっちゃった、お兄ちゃん...」 お兄ちゃんのこれまでにない困惑した苦笑はとてつもなく可愛い。 「気にしないで、大丈夫だから...」 ふと視線を落とした先。 兄の白いシャツが水で透け、兄のピンク色の乳首が透けている! これは一大事、もしαの生徒が戻ってきたりでもしたら... 僕は鞄から慌ててタオルを取り出すと兄の首に掛けた。 透けていた乳首がタオルで隠れ、ホッと胸を撫で下ろすのも束の間。 「ありがとう、奏斗」 満面の笑顔で兄、優斗はそのタオルで濡れた髪をわしゃわしゃと拭き始めた。 ...違う、違う、そうじゃない! まあ、髪の毛も乾かさなきゃいけないのは確かではあるんだけど...。 それならば、と、僕は自分のブレザーを兄の肩に掛け、ふう、と冷や汗を拭った。 まずはずぶ濡れになった兄をどうにかしよう、風邪引いてしまう。 案の定、くちゅん!と兄は可愛いくしゃみを連発し始めた。 兄のクラスに行き、ジャージと鞄を取りに行き、それから、コンクリートで出来た噴水の縁に脚を引っ掛けたのだから、兄が怪我していないか確認し、もししていたら、応急処置しなきゃ! 僕は兄を自分の椅子に座らせ、兄の両肩に手を置き、 「お兄ちゃん!そこから一歩も動かないで!すぐに戻るから!」 急いで兄のクラスに行かなくちゃ! 教室を離れる際、 「絶対だからね!動かないで、そこにいて!お兄ちゃん!」 (...ピンクだった) 鮮明に蘇る兄の透けた乳首が脳内で否応なしに再生されるが、今はそれどころじゃない! と、そこからの僕は忍者の如く、今までにない瞬足で兄のクラスに向かった。 兄のクラスも体育で誰もいない、僕は兄のジャージが入っている巾着袋の中身を確認し、兄の鞄を持つと、再び、大急ぎで兄を待たせている自分のクラスに戻った。 ハアハア息を切らす僕は戻るなり、暫し、呆然とした。

ともだちにシェアしよう!