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第29話

水を含み、透け透けだった白いワイシャツを脱ぎ、半裸の兄の姿があった。 「お、お兄ちゃん!じっとしててって言ったでしょ!」 「え?」 きょとんと僕を振り返る兄。 「あ、いや、体に張り付いて、気持ち悪かったから...」 兄は頭を拭いていた貸したタオルで上半身を拭っていた。 「誰か来たら大変でしょ!」 僕は改めて、巾着袋から兄のジャージを取り出し、差し出した。 「....わざわざ、取りに行ってくれたんだ、ありがとう、奏斗」 「いいから、早く着替えて!」 リミット、あと、40分。40分したら、僕のクラスメイト達が戻って来てしまう。 後ろを向いた兄がカチャカチャとベルトを外し、スラックスを脱いだ。 僕よりは広いけど、決して広いとは言い難い色白な兄の背中のその下。 兄のグレーのボクサーが水を含み張り付き、兄の小さくしまった尻の輪郭を浮き彫りにしていた。 それどころか割れ目もくっきり...。 「ちょ、ちょっと待ってて、僕も着替えるから、後ろ向いてて、お兄ちゃん」 「え?うん」 僕も着ていたジャージから制服に着替える作業。 スラックスを履く前にスルリ、と両脚からボクサーを脱いでからスラックスを履いた。 僕はお兄ちゃんに向き直る。 「はい!お兄ちゃん!」 ボクサーを手に差し出す僕に暫く、目を丸くしてた。 「パンツまで用意してたんだ?さすが奏斗...」 兄の言葉を遮った。 「今、脱いだ」 「...え?」 「ほら!早く!お兄ちゃん、パンツもびしょびしょでしょ!」 グイグイ、お兄ちゃんに、受け取って、と脱ぎたてのボクサーを押し付ける。 「まだそんな汚くないから。そんなびしょびしょなパンツなんか履いて帰宅してたら風邪引く!」 「の、ノーパンなのか?お前...」 「別に気にしないし、大丈夫だから、ほら!」 「大丈夫な訳ないだろう!お兄ちゃんがノーパンでいいから履きなさい!奏斗」 「お兄ちゃんが履かないなら履かない!」 ちょっと視線を下ろせないけれど、お尻もあんなにくっきり、輪郭を露にしていたくらいだ。前の方もきっとそうなっているだろう。 「...わかったよ」 ようやく、渋々、兄の手が僕の脱ぎたてのボクサーを受け取り、僕は背中を向けた。

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