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第31話

学校の体育用のジャージに着替えた兄を連れ、タイムリミットギリギリで、僕は校門をくぐった。 「...ホントにごめんな、奏斗。こんなお兄ちゃんで」 しゅん、と肩を落として歩く隣の兄の今まで見たことのない切ない表情に僕まで胸が痛んだ。 「気にしないって言ったじゃん。それに...」 そこまで言うと僕は兄から視線を逸らし、アスファルトを見つめる。 「そ、その、あんまりしっかりし過ぎてて心配だったんだ、それに...」 兄の視線を感じながら変わらず僕は俯いたまま続けた。 「なんだか最近のお兄ちゃん、しっかりし過ぎてて...なんだか他人みたいで、別の誰かのようで...寂しかった」 暫く、お兄ちゃんはぱちばちと瞬きを忙しなく繰り返し、僕を見つめ、 「そ、そうだったの?」 僕はこくん、と頷いた。 とすぐに僕は笑顔になった。 「やっと帰ってきてくれた。僕のお兄ちゃん」 その笑顔に優斗はきゅん、とした。 「そ、その、大丈夫か?」 「大丈夫ってなにが?」 「そ、その、お前、ノーパンだろ」 「あー、別に。それよりお兄ちゃんこそ大丈夫?帰ったら暖かいお風呂に浸かった方がいいね、体、冷えたでしょ?湿布も張り替えなくっちゃ」 最近、覇気のなかった奏斗に笑顔が戻り、優斗も安心した。 といっても、普段は無表情。 兄の優斗と家族、兄の友人、恭一、大貴、慶太にしか見せない、貴重な笑顔だが。

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