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第32話
帰宅するな否や、奏斗はふんふんと適当な鼻歌を歌いながら、嬉しそうに浴室に向かい、湯船にお湯を張った。
奏斗のそんな姿に優斗も思わず笑みが零れた。
いざ部屋着になると、奏斗のボクサーを履いていることに気づき、脱いで自分のボクサーに履き替えるか、とも思ったが、奏斗も湯船を張ってくれているんだし、その時でいいや、と勉強机に座るなり。
LINEの通知に気づき、スマホを開く。
恭一、大貴、慶太とのグループLINEだ。
「優斗、盛大に噴水に飛び込んだんだって?」
「まあ、今日、暑かったもんねー、噴水をプールと間違えちゃった?」
大貴と慶太にちゃかされた。
「にしても、奏斗がいて良かったな」
「俺もそう思う」
恭一の一言に自然と優斗が笑顔になった。
「え?お前、知ってたの?」
「え?なにが?」
恭一からの質問に頭の中、クエスチョンマーク。
「お前を狙ってるαがいること。奏斗がお前を連れてかなかったら危なかったかもな」
「....は?」
「やっぱ、気づいてないんじゃない?優斗も奏斗も兄弟揃って、自分のことは無関心だから」
慶太のLINEに再度、クエスチョンマークが飛び交った。
「信じないだろうと思って話さなかったんだけどさ、奏斗だけじゃなくて、お前にもファンは多いんだよ」
恭一のLINEに、えっ?と小首を傾げた。
「...俺にファン?」
「そっ。ほら、優斗、見た目はイケメンじゃん?そんな優斗のドジっぷりが、ギャップ萌えー♡
とか言う変わり者もいるんだよ」
お前に変わり者、と言われたくない、と慶太からのLINEに目を細める。
「奏斗があの場にいなかったら、お前を介抱する振りするか、着替えを覗かれて、犯された可能性も無きにしも非ず。奏斗に感謝しろよ」
恭一の一言にも未だ、ピンと来ない。
こんなドジな俺に?そんなわけ。
また、俺をからかってんだな、と優斗はスマホを閉じた。
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