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第39話
奏斗を守る、と意気込んでいた優斗だったが、αがいる学校を恐れ、本音を言うと、欠席したかった。
そして、朝。
「お兄ちゃん、入るよ」
奏斗は優斗の部屋へ入ると、未だショックが隠せない様子の兄はもどかしい手つきで制服に着替えている。
奏斗はいても立ってもいられなくなり、母に昨日の事件を打ち明けた。
「ああ...だからΩしかいない学校に編入したいだなんて言ったのね...」
母もまた、顔色を曇らせた。
「お兄ちゃん、無理して学校、行こうとしてる。まだ襲われたショックから立ち直れてもないのに。...お母さん、お兄ちゃんを休ませてあげてくれない...?」
母も困惑した顔で暫し考え、
「...そうね。でも優斗、一人だと心配だし、お母さんもパートを休む訳にいかないの。奏斗、優斗の傍に居てあげてくれる?」
優斗の性格は母も充分、わかっている。
「うん。ありがとう、お母さん」
奏斗は再び、優斗の部屋に入り、
「お兄ちゃん、お母さん、学校、休んでいいって。ゆっくり休んで、お兄ちゃん」
「でも...」
奏斗を一人、学校に行かせるのが心配な優斗は口篭る。
自分のように、奏斗も襲われたら...と不安と心配が渦巻いた。
「僕もお母さんから休んでいいって言われたんだ。お兄ちゃん、犬や猫とかの動物の番組、好きだったでしょ?録画してるやつ、一緒に見よ」
戸惑う優斗に奏斗は優しく微笑み掛けた。
「うん...ありがとう、奏斗。ごめんな、こんなお兄ちゃんで」
「お兄ちゃんだから、て今回のことは関係ないよ、お兄ちゃんのせいでもないし」
薄ら涙を浮かべる優斗は、困惑しながらもゆっくり頷いた。
その一方。
恭一たちは奏斗に優斗を襲った相手の特徴を尋ねたが、背中しか見ていないのもあり、優斗より背が高く、体も大きい、多分、三年、としか伝えられなかった。
「いっちょ、しらみ潰しにやりますか」
「だな、優斗を二度と襲わせないよう、片っ端から片付けるか」
うんうん、と慶太も頷いた。
恭一、大貴、慶太は見ず知らずの生徒に襲われた友人の優斗やそんな優斗を心配する奏斗の代わりに動き始めようとしていた。
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