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第3話 俺の貞淑なお尻は後輩くん専用じゃない!(2)

俺は付箋に書いてあったお誘いの返事をLINEで送った。 『ごめん木曜日は予定あるから無理』 そっけない文面は一瞬で既読になって、泣き顔の猫のスタンプが送られてきた。 その後続けて別日の誘いが来る。 『じゃあ水曜日は?ちょっと遅くなっても良ければ』 だってさ。めげないイケメンだな。 だが俺は断った。 『水曜日も無理。ごめん』 その後篠田は何かメッセージを送ってきてたと思うけど、あえて見ないようにした。 そして俺はというと、アナニー不振で切羽詰まって次の週の木曜日に知らない男とホテルに行く約束をしていた。 俺の尻は篠田専用じゃないんだ。 指とかおもちゃでイケないなら、他に男を探すまでだ。 篠田にやってもらえばいいって? あんなイケメンのテクに溺れてたら、俺は生きていけない。 だって篠田はきっとすぐに俺に飽きておっぱいデカい美人と結婚するはずだ。 だから、あんな見た目も身体もテクも完璧な男に抱かれるのに慣れるわけにはいかない。 というわけで俺は初めて使うマッチングアプリを駆使して相手の男を物色し、見た目はどうかわからないけどやりとりしていてまあまともと思える男と約束を取り付けた。 (大多数は、半分隠した俺の顔写真を見て俺とやりたい!ってのが溢れすぎてて怖い人ばかりだった) 後輩の誘いを断って知らない男とホテルに行くクズな俺は待ち合わせ場所に立っていた。 あ、ちなみに勢い付けるために先に一杯引っ掛けてきてある。 それでも正直もう怖くて怖くて足が震えていた。 やっぱりやめたほうがいい。うん。帰ろう! そう思ったとき眼の前に人が来て声を掛けられた。 「すいません、もしかして青い猫くん?」 青い猫とは俺のアプリ上の名前だ。 「あ……はい……灰色筋肉さんですか?」 「はい。よかった、すぐ会えたね」 逃げそびれた…心臓バクバクして死にそうだ… 俺はちょっと涙目になりつつ現れた男の人について歩く。 灰色筋肉さんは、背は俺と同じくらいだから170ちょいくらい。 で、名前の通り鍛えててガッシリしてる。 顔はあんまり特徴が無い塩顔の30代前半くらいの人だった。 俺より少し上だと思う。 「目を隠した写真でもたぶん綺麗な顔してると思ったけどこんな可愛い子が来るなんてびっくりだよ」 「いえ、そんな…普通です…」 変な汗がだらだら流れる。帰りたい帰りたい帰りたい 「ここでいい?」 「はい…」 ここってつまりホテルのことだ。よくわからないから頷くしかない。 何やってるんだろう俺。 「サラリーマン?かっこいいよね、スーツ似合う。お尻のラインエロいな~。」 部屋に入ったらいきなり全身舐めるように見られていやらしいことを言われた。 アプリでのやりとりも、待ち合わせ場所で会ってからホテル入るまでも普通の人だなって思ってたけどで来てるんだからエロい目で見られて当然だった。 でも、ダメだった。 気持ち悪いって思っちゃった。 ジャケットを脱がされて、ベッドに座らされて、ベルトに手をかけられる。 「ご、ごめんなさい!!!!」 俺は結局初対面の人とやるのは無理だった。 灰色筋肉さんはちょっと呆れてたけど、君みたいな可愛い子がおかしいと思ったんだよ、と文句を言いつつ何もせずに解放してくれた。 よかった。変な人だったらきっと強引にやられてた。 堪えきれなかった涙がぽたぽたと溢れた。 「無茶するのやめときなよ~」と言って灰色筋肉さんは去っていった。 ホテルの前で別れて、俺は駅に向かおうとした。 すると目の前に見知った奴が立っていた。 篠田だった。

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