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第17話 俺の妹にイケメン彼氏はあげない!(1)
「あ、篠田ごめん今度の週末妹来るから会えないわ!」
俺がスマホを見ながらそう言うと篠田は情けない顔をした。
「えーっ!そうなのぉ!?悲しい…」
「今度埋め合わせするから。な?」
「わかりましたぁ。てか先輩妹さんいたんすね」
「うん。2人兄妹だよ。そういや篠田は?」
「俺は上に姉下に弟です」
「え!もしかして美人!?」
篠田は呆れ顔で答える。
「なんでそんな食いつくんですか。まぁ、美人な方だとは思いますけど」
「弟もイケメン?」
「さあ、俺から見れば普通ですけど…まぁモテますかね?あ!ダメですよ?俺より若い男を狙おうとしてません!?まだ大学生っすよ!?」
「ばっか、そんな訳ないだろ」
そっかぁ篠田は上も下もいるんだ。
なんとなく甘え上手だし、かといって俺も甘えさせてもらえるし…ふーんなるほどね。
「先輩が家のこととかだけはしっかりしてるのって、妹さんいるからなんですね」
だけはってなんだ。だけはって。
「まぁ、先輩は基本迂闊なんで俺がちゃんと見てないとだめですけどね」
ふざけて後ろから抱きつこうとする。
「おい、ここ職場だぞふざけんなよ」
俺は低い声で威嚇した。
「ちぇ~。じゃあ再来週は絶対俺と過ごしましょうね」
「はいはい、ほらもう行けよ。上司呼んでるぞ」
「えっうそ!!あ~~行きたくないよ~~俺もここの子になりてぇ~~」
「うるさい、お前が店舗なんて出たら女の子が騒いで仕事にならんわ。さっさと本社へ戻って馬車馬のように働け」
篠田は笑顔で手を振って去っていった。
そして金曜夜、妹がうちに来た。2泊して土日は俺を連れ回す予定だ。
俺は荷物持ちね。
地方から買い物目当てで来るから荷物がすごいんだよ。
これを年に数回付き合わされる。
彼女居るときでも関係ないくらい、妹は俺に遠慮がない。
まあ、そういうとこ含めて可愛いんだけどね。
「おじゃましまーす」
「はいはい、どうぞ」
妹は部屋に入るなりキョロキョロして言う。
「相変わらず綺麗にしてるよねぇ。彼女は別れたんだっけ?」
「うるせー」
「早く新しい彼女作んなよ?珍しいじゃん、もう何ヶ月?いつも途切れないのにね。歳のせい?」
妹が両頬を掴んで見てくる。
「おい、やめろよ」
「肌艶は悪くないけどねぇ」
ったりめーだ、会社一のイケメン後輩に愛されてるからな。
なーんて…
「私の友達紹介しようか?」
「だから、要らないってば」
「ふーん?」
その夜は家で俺が適当に作った物を食べた。
そして翌日、朝早くから叩き起こされて俺は朝食のためにカフェに連れて行かれた。
「ふぁあ~あ、なんでこんな朝から外で食べんの?眠てえ」
「お兄ちゃん馬鹿なの?こんな朝食、地元にはないの!」
「ふーん?わざわざこんなとこまで来て食べるもんなのかねぇ」
そこは倉庫を改装したベーカリー兼カフェで、運河を眺めながらテラス席で食事が出来た。
確かに天気が良いと気持ちがいい。
「都内に住んでる人にはこの気持ちはわかんないの。たまになんだから文句言わず付き合ってくれてもいいでしょ」
「うん、まぁ…このクロワッサンは美味いな」
今度篠田と…んー、どうだろ?あんまおしゃれなカフェとか一緒に行かないな。
前女の子と付き合ってる時は色々調べてあちこちお店も回ったけど。
篠田は、ご飯は俺が作ったの食べるほうが良いって言うし。片付けは手伝ってくれるから俺はそれでもいいし。
(先にエッチしちゃうことも多いけどまあ最後は片付けてくれる)
「デートか…」
「ん?どうしたの?デートでうまく行かなくて別れたん?」
「いや、違うけど」
「お兄ちゃん、なんか変わった?」
「はぁ?なんだよ急に」
「さぁ。なんとなく?トゲトゲしくなくなった?ってのも違うかなぁ」
妹はよくわからんことをたまに言うので全てを取り合う必要は無い。
スルーしていたら妹が食べ終えて手に付いたパン屑を払った。
「さて、食べたから移動しよっか!」
その後も電車であちこち連れまわされ、俺が持つ紙袋がどんどん増え、くったくたになって夕食どきを迎えた。
「あーもうお腹空いちゃった!お兄ちゃんなんか食べていこう!」
「うん。何が良い?」
「なんでも!」
「出たよ女のナンデモ」
「は?文句あんの?」
「だってこれでラーメンっつったら怒るんだろ?」
「馬鹿なこと言ってないでさっさとお店連れてってよ」
「へーへー」
そして俺はそこから近くて、彼女を連れてきたことのあるオープンカフェに入った。荷物が多いから室内より外の方が良いと思ったのだ。
メニューを見つつ何にしようか考えながらふと目の前の通行人を眺める。
背が高くてモデルみたいな男がいるなぁと思った。
そしたらその男が近づいてきて、俺の目の前で止まった。
「先輩!?嘘ー!びっくりしたぁ」
「えっ…」
なんだこのイケメンと思ったら篠田じゃねえか。
「お前何やってんの…?」
「いや、たまたま通り掛かってなんか見たことあるシルエットだなーって寄ってみたら先輩でした!」
そしてめちゃくちゃいい笑顔を向けられた。
私服の篠田は…悔しいけどかっこよかった。
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