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第44話 【篠田視点】甘やかしデートのはずが…(1)

怖いおばさんに襲われた先輩を助けた日の夜。 帰宅後風呂で全身綺麗に洗って、笑いながら酒を飲んだ。先輩はおばさんに変な薬を飲まされたと言ってたが、酔ったらいつもより少し性感が増してるかなって程度の効果しか出なくて良かった。 フェラしながら尻を弄って1回、中に挿れて2回イかせてやったら落ちついて、疲れもあったのか最後は寝落ちしてしまった。 身体を拭いてやり、そのまま寝かせた後俺はリビングの方にいた。 すると寝室から先輩の叫び声が聞こえてきて慌てて駆けつけた。 「いや、やめて…!やだ!やだぁ!」 先輩は胸をかきむしって暴れていた。 「先輩、もう大丈夫だよ。家だからね。怖い人はいないよ」 俺が肩に手を触れると、その手を振り払って身を捩った。 「いやぁっや、やだぁ、触らないで!」 俺は強めに肩を掴む。 「先輩、一樹さん!俺だよ」 「ヒィッ!」 肩を揺すったらようやく目を覚ました。 涙を流しながら辺りを見回してる。 「はぁ、はぁ、はぁ…あ、あれ…?篠田…?」 「そうだよ。もう心配いらないよ」 俺は横に寝て、先輩の体を包むように優しく抱きしめた。 背中をさすってやる。 先輩は気が立ってるときでも背中を撫でると安心するのだ。 「いい子だね、もう大丈夫、俺がいるよ。寝て大丈夫だからね…」 「しのだ…こわかった…こわかっ……た…」 すーっすーっとまた規則正しい寝息が聞こえてきた。 こりゃ今夜はまた目を覚ましそうだな。 先輩、馬鹿で単細胞に見えて意外と神経細やかで気にしいだからなぁ… 薬もまだ変に残ってるのか? 指で涙を拭い、泣きぼくろにキスした。 俺もそのまま寝ることにした。 そして、夜中にもう1回同じようなことがあったが朝起きたら先輩はケロッとしていて夜中自分が起きたことも覚えていなかった。 体調的には何ともなさそうだったが、可哀想だからこの週末はゆっくりしてもらうか…。 「先輩、今日は疲れてるだろうから家のことしないで出掛けよう」 「え?俺もう何とも無いよ?それに洗濯物が…」 先輩はキョトンとしている。 「いいから、洗濯は俺するから先輩は座ってて。終わったら先輩の行きたいとこ行こう」 それを聞いて先輩は嬉しそうな顔をした。 「えー、どこ行こう」 なんだかんだ、俺が洗濯してる間に先輩はちょこまかと動き回って掃除したりしていた。 好きでやってるようなので止めない。 俺だったら休日は何にもしたくないんだが、先輩は部屋の中を綺麗にするのが気分転換になると言っていた。 多分、先輩は少しだけど潔癖な所があって、昨日みたいに親しくない人間に無闇に触られるのをすごく嫌がる。 本気でやられる前に助けられて良かった。 朝食は家で食べずに外に出た。 近くのベーカリーカフェでコーヒーとパンだけ腹に入れて電車に乗る。 着いた先の駅ビルで先輩が本を見たいというから本屋に寄った。 先輩は料理本などのコーナーを見るというので、俺はビジネス書を見てくると言って一旦別れた。 ざっと眺めたところ特に欲しい本も無かったので先輩のいるコーナーに戻った。 すると、先輩は見知らぬカップルと話していた。 女はどこにでもいそうな、30歳前後のロングヘア。男は背は低いががっしりした体型のオラオラ系。 「先輩?えっと…」 振り返って俺を見た先輩は少し動揺してるような表情だった。 なんだ…? カップルの女の方が俺を見て頬を染めながら言う。 「一樹この人は?すご…モデルじゃないよね?」 「ああ…、こいつは会社の後輩」 「えーこんなイケメンいたんだ!」 女がはしゃいでるのを見て隣の男は女の腰に腕を回して力を込めた。 それで彼氏連れなのを思い出したのか、女は媚びた笑みを引っ込めた。 「行くぞ」 「あ、ごめんじゃあ私行くね~」 「あ、うん」 背中を向けた2人はまだこちらに聞こえる距離にいるのに、わざとなのか男の方が「あいつアナルの奴?」と言って女が「そーそー」と答え、「うけるマジか」と笑った。 先輩にも勿論聞こえてて、真っ青な顔をしてる。 「俺たちも行こう、篠田」 そうか、あれが例の先輩振った元カノか。 ちっ、クズが。 男が更に言う。 「あいつらホモなんじゃねーの?」 「もう、可哀想だからやめなよぉ、聞こえるよ」 女が半笑いで言うのを聞いて俺は我慢ならず追いかけた。 「あ、ちょっ…篠田!」 後ろを向いて肩を震わせてるカップルに言ってやる。 「おい、俺がそのホモだけど何が悪いんだ?元付き合ってた男の悪口言うような女と付き合ってる奴の方が可哀想だろ。同情するよ」 2人が振り返って俺を見上げた。 言い返されるとは思ってなかったカップルは面食らって言い返せないでいる。 これ以上時間の無駄なので引き返して先輩の腕を取り歩き始めた。 「ごめん先輩、余計なことして。我慢できなかった」 「いや……ありがとう」

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