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【番外編】3.過去の秘密(2)
俺は二人に抱えられるようにしてソファに座らされた。
「はい、お水」
水を貰ってゴクゴクと飲む。駅から30分くらい歩いたから汗だくだ。
「いっちゃん、もう遅いし少し酔いが冷めたらお風呂入ってこっちに泊まりなよ」
「うーん…」
「このバカは一体何だってこんなに飲んだんだよ」
兄弟が喋ってる声がぼんやりと聞こえる。
俺がなんでこんなに飲んだかって?
それはなあ、女の子とセックス上手くできなかったからだよ!バーカ。
つーかこいつらきっと童貞じゃないよな。
「なあ、お前たち女の子としたことあんの」
気づいたら口に出して聞いていた。
「何、急に?」
「だから、セックスしたことあんのかって聞いてんの」
兄弟は顔を見合わせた。
「いっちゃん…それが何か関係あるのか?こんなに酔っ払ってることに」
「俺、今日彼女とセックスした」
「え?!?!」
兄弟二人してびっくりしている。
なんだ、イケメン様たちでもこんなに驚くことあんのかよ。
「……ってのは嘘。できなかったんだ…本当は」
また二人で顔を見合わせてる。
「おい、そこ!笑うなよ!」
「笑ってないよ」
俺はばかばかしくなってこれ以上話したくなくなった。
「帰るわ…」
立ち上がって玄関へ行こうとしたが、ドアの近くにいた剣志が行く手を阻んだ。
無表情でこっちを見ながら言う。
「それで?上手くいかなくてやけ酒か」
「どけよ」
俺は剣志を押し退けようとしたが、腕を掴まれてソファに突き飛ばされた。
「教えてやろうか?セックスの仕方」
「冗談言うな、高校生にそんなこと頼むほど困ってねーわ」
「ふーん。じゃあずっと童貞でいろよ」
ぼそっと言う剣志を睨みつける。向こうも俺を苛立ちの混じった目で見下ろしてくる。
ふいにじわっと涙が滲んできた。
「お前らにはわかんねーよ!産まれたときからイケメンで女にモテてきた奴らはいいよな。大体お前らみたいなのが近くにいるから俺がモテなかったんだぞ!お前らのせいだかんな!」
支離滅裂なこと言ってるのはわかっていたが、暴走した俺の口は止まってくれなかった。
「しかもなんだよ。俺、ずっと一緒にいたのにお前たちにそういうことする相手いたのも知らなかったんだけど?俺だけバカみたいじゃん。面白くねえ」
「いっちゃん…」
俺が激昂していても、佑成の声はずっと優しいトーンのままだ。
「やめろよ、そういう目で見んな!同情するつもりかよ。笑えばいいだろ、20歳になってセックスの一つもろくにできない男だってな!」
横に立っていた剣志を押しのけて佑成が俺の隣に座った。そして長い腕で抱きしめられる。
「いっちゃんが困ってるなら俺が教えてあげる」
「……ふざけんな」
「本気だよ。それとも俺が怖い?」
「は?怖いわけねえだろ」
「怖くないよ。優しくするから」
「は…?」
気づいたらキスされていた。
優しくするってなんだ??
「ん…っ?」
ちょっと待て。舌入って来てるんだけど!?
「まっ!んんっ」
ぬる…くちゅ…
気持ち悪…いはずなのに…なんか頭がぼーっとして…なんだこれ…
「ん…はぁっ♡」
あ?俺の声かこれ??キモいな。女みてえな甘ったれた声出してんじゃねーぞ俺。
「あーあ、なんだよこのだらしねー顔は」
口の中を舐められる音が響く中、頭上から剣志の声がする。こんな所見られて、恥ずかしくて死にそうだ。
「んっんんっ」
「エッロい顔しやがって。お前こんなんでどうやって女抱こうとしてたんだよ」
剣志が俺の股間に手をやった。
え…うそ…?
「キスだけで勃起してんのか」
「ああっやめて!」
ぐりぐりと揉まれる。うそうそうそ。
「んっ」
「剣志。優しくするって言っただろう」
佑成が剣志をたしなめた。そしてそこからは二人がかりで俺の身体を優しく撫でたり舐めたりしてきた。
酔ってるせいで俺はどこを触られても気持ちが良くて、ひっきりなしに喘ぎ声を上げながら悶えていた。
「いっちゃん…こうやってまず女の子のことたくさん気持ちよくしてあげるんだよ。わかった?」
「あ…あんっはぁ、はぁ、わかったぁ…」
「いい子だね。じゃあ挿れる準備しようね?」
「え…挿れる?」
頭がボーッとなっているうちに佑成の指が俺の尻の穴に滑り込んできた。何か付けているようで、ぬるぬるしていてすぐに中に入り込んだ。
「ひぃっ!!なに!?や、なんで?!」
俺が暴れたので剣志が両腕を押さえた。
「やだ、なんでそんなところ触るの?!」
「暴れるな、怪我するぞ」
剣志はともかく、いつも優しい佑成の顔にも笑みは無く、欲望に濡れ光る眼で俺の尻を見ながら指を動かしている。
「や…怖いよ…」
「あ、ごめんね?でも痛くないよね?」
違和感はあるが痛くはなかった。俺は黙って頷いた。
そして佑成がグリッと指を少し曲げたとき、俺はビクッと震えて声をあげてしまった。
「ああっ!や、そこ変!」
「ここ、気持ちいいんだね」
佑成はそこばかり執拗に弄り始めた。
くぽっくぽっくぽっ…
指を出し入れされて、初めて感じる快感に俺は恐怖を感じたが、気持ちよくて腰が揺れてしまう。
「あっやだ…やぁ…そこきもちいいっん…」
「可愛い…いっちゃん…」
綺麗な顔が近づいてきて、キスされ口の中を舐められ、口中と尻の穴を両方犯される感覚に俺の脳はついていけずただ喘ぐことしかできなかった。
もう少しでイッてしまいそうだと思ったとき、指が抜かれてしまった。
「え…なに?」
あと少しだけ中を擦ってくれたらイケそうなのに、お尻の穴の周りをぬるぬると指でなぞられる。
「あ…それや…なんで…中いじって?」
「いっちゃん。こうやって、もう挿れてって女の子が言ってくれるまでほぐすんだよ」
「ぁ…わかった…お願い、挿れて…」
「何を挿れるかわかってるの?」
「え、指だよ?」
すると俺の腕を押さえていた剣志が吹き出した。
なに?
「お願い佑成、挿れて…指で気持ちよくして」
「いっちゃん違うでしょ。俺たち何の練習してるの?セックスでしょ?」
「あ…?」
そうだっけ?もう、なんでもいいからイキたい。
「挿れるのは俺のこれでしょ」
佑成が股間のものを指した。
「え、そんな大きいの入るわけないでしょ」
昔から良く一緒に風呂には入っていたけど、勃起した佑成のペニスは初めて見た。
俺のよりずっとデカい。
「大丈夫入るよ。たっぷりほぐしたからね…」
先っぽで尻の穴をぬるぬると擦られる。ああ…もうたまらない。中を擦って欲しいんだってば!
「だめそこ…もういいからそれ挿れて!中に欲しいのぉ…」
また兄弟で顔を見合わせてる。
くすっと笑って佑成が腰を前に進めた。
「すごいね…初めてとは思えないくらいおねだりが上手だよ。いじめたくなるなぁ」
「ああ…やばいこれ…大きいの入ってくる…ぅ」
痛みはない。すごい、やっぱり佑成たちのテクニックだと初めてでも気持ちよくさせられるんだ…
そこからはもう夢中で、イクことだけ考えて腰を振っていた。
俺が女の子を抱くとして、佑成の真似しろと言われても無理だとしか思えない。
「あっ!いいっいいっ♡んっああっ」
「いっちゃん可愛い…可愛い…最高だよ。セックス気持ちいいね?」
「気持ちいいっ♡佑成とセックスするのきもちいいよぉ…」
「俺もいいよ。いっちゃんとするのが一番気持ちいい…」
ずちゅっずちゅっずちゅっ…
「ごめんね…俺たちのせいで…」
「ん…なに…?」
佑成の律動に合わせて俺も動き、気持ちよくなって頭真っ白になりながら射精した。
佑成も俺の中に出したと思う。もうよくわからなかった。
射精の余韻に浸っていたら、呼吸が整わないうちに佑成が中から出ていって今度は剣志が俺に覆いかぶさってきた。
「これで終われると思ってる?こっからが本番でしょ。女の子をちゃんと満足させるまで休んじゃダメだろ?」
「え…うそ…」
その後剣志にも中をめちゃくちゃに突かれて、俺は泣かされた。
高1の剣志にこんな姿見せるのは恥ずかしくて仕方がないのに、最後は首にしがみついてイカせてって言ってた。
翌朝、全身綺麗にされてサイズの合わない服を着せられてたのはたぶん二人がやってくれたんだと思う。
イキまくった後の記憶が飛んでいる。
恥ずかしすぎて、俺は翌朝全部忘れたことにした。
「いっちゃんおはよう。身体大丈夫?」
たぶん、二人にしつこく抱かれたことについて聞かれてると思うが、ここは知らないふりで通す。
「ごめん…俺なんでこの家で寝てるの?酒で記憶飛んでるんだよね…迷惑かけてごめん。吐いたりしなかった?」
佑成は一瞬俺の目をじっと見てどうするか迷った顔をしたが、すぐにいつもの笑顔に戻って答えた。
「突然うちに来て、お水飲んだら寝ちゃったんだよ。吐いたりしてないから大丈夫」
こうしてこの夏の夜の出来事は俺達の間では無かったことになった。
俺はこの経験をしてから女の子を抱くなんて考えることもできなくなってしまって、その時の彼女とはすぐに別れた。
それ以来女の子とは付き合っていない。
この事があってから程なくして、篠田一家は東京に引っ越していった。
これは俺にとっては好都合だった。
あの後俺の中に芽生えた佑成と剣志への気持ちが、本人たちにバレることがなくなってホッとした。
たまに今回のように会いに来てくれるが、短い期間ならこの感情を押し隠すことは容易だった。
これが俺の抱えてる秘密だ。
電動ミルからコーヒー豆を取り出すと、俺の忌まわしい過去の淫らな匂いを掻き消すように、店内にコーヒー豆のいい香りが漂った。
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