「え…転生ってでも…ええ！？」 俺がパニックになっていると剣志は車のエンジンを切って言った。 「とにかくここがどこなのか確認しよう。そうだ、スマホの電波は？」 3人とも画面を確認したがやはり圏外だ。普通民家があれば基地局もあるはずだが、近くに民家らしきものがあるのに圏外なのはおかしいよな。 3人で車を降り、おっさんの元へ行く。 「あのー…」 「…やあ。ここらでは見ない顔だな」 え？それさっきもこの人同じこと…あ！ そうか、このおっさんのセリフは決まってるんだ。 「こんな所へ来るとは物好きな若者だな」 じゃあこっちもそれらしく答えておこう。 「俺たち肝試しに来たんです」 「肝試しか。それなら君たちに頼みたいことがある。5枚のお札を集めて、井戸に貼ってくれ。」 俺たちは顔を見合わせる。 次は佑成が質問する。 「道に迷ったんですがここはどこですか？お札ってどういうことです？」 「ここはY村の入り口だよ。この村の者はみんな怖がって誰も神社まで行けないんだ。だから、余所者の君達にしか頼めない。お願いだ…！夜明けまでにお札を5枚集めて井戸に貼ってくれ。屍霊の呪いを封じられるのは余所者の君達だけなんだ！頼む！」 ここでおっさんに背中を向け、３人で頭を寄せ合う。 俺は記憶を頼りに言う。 「これって主人公グループの3人がお札集めて井戸に貼って女の霊を封じたらクリアだったよな。それを俺達で夜明けまでにやれば、元の世界に戻れるんじゃない？」 「そうか…道がわからない以上、やってみるしかないよな」 「ああ。やろう」 振り向いておっさんに言う。 「わかりました。俺達でやってみます」 「ありがとう、私はある事件の犯人にはめられて学校をやめさせられた中学校の教師、山本だ。村人は私のことを変質者だと思いこんでしまって私が言うことは誰も信じてくれんのだ」 やはりゲームの通りこのおっさんは教師だった。 おっさんが話してくれた経緯はこうだ。 4ヶ月前、この村の18歳の少女小林あゆみが自殺した。 それからしばらくして、村では怪奇現象が起き始める。 女の幽霊を見た人が続出し、村役場や駐在所などでポルターガイスト現象が起きたと噂になった。 また、林の奥の神社に近づくと誰かに追いかけられると話す者が増えた。 そしてついにこの1～2ヶ月の間に、女の霊を見た者が事故や病気で倒れるという現象が起きるに至って村内の恐怖は頂点に達した。 村人はなるべく外に出ぬようになり、神社や幽霊の目撃された建物等に近づく者はいなくなった。 山本はこの怪奇現象に思い当たるふしがあった。 自殺した少女あゆみが、死ぬ直前に元担任教師であった山本に相談に来たという。 あゆみは山本が元々村の人間ではなく、外部から赴任してきたよそ者だったという理由で秘密を明かした。 実はあゆみは村内のある人物にレイプされ、妊娠してしまったという。 そしてそのことを村の大人に話したが、相手が地位のある人間だったのか、なぜか表沙汰にされずレイプ事件自体闇に葬り去られたのだそうだ。 つまり、あゆみは泣き寝入りさせられたのだ。 あゆみの父は村の駐在（巡査）であるにも関わらず、金を握らされて沈黙したという。 その他にも数名がこの事件を知りながら、揉み消すのに関わったとあゆみは話した。 山本はこの話を聞き、外部に告発しようと証拠集めを始めた。 しかし、あゆみはレイプ犯の名を次会ったとき告げると言ったままその後すぐに村の外れにある井戸に身を投げて自殺してしまった。 山本はあゆみを不憫に思って証拠集めを続けようとした。 するとその直後、山本が学校内でわいせつ行為をはたらいたとする匿名の偽告発があり真偽不明であるにも関わらず教育委員会は山本に減給処分を言い渡した。 そしてこの閉鎖的な村の中では噂がすぐに広まり、山本をやめさせるようにPTAが働きかける事態に発展した。 結局山本は周囲の圧力に負けて自主退職に追い込まれた。 「おそらく、レイプ犯が私の動きに勘付いて口封じをするために社会的に抹殺しようとしたんだと思う」 山本は悔しさを滲ませて言った。 「あゆみくんは中学校の頃から真面目で良い生徒だった。どうか、彼女の怨念を晴らして霊を封じ込めて欲しい。そのためには事件に関わった人間が持っているお札を集めて井戸に貼り浄化させる必要があるんだ」 これを聞いて佑成が疑問を呈した。 「なんであなたはこの浄化の方法を知っているんです？」 そこはゲームだから突っ込んでやるなよ… 「それはな。死んだあゆみくんからこんなものが送られてきたからだよ」 おっさんは胸ポケットからピンク色のスマートフォンを取り出した。 ちょっと古いタイプの、縁の幅が広くて画面が小さいタイプだ。 サイズも今の物より一回り小さい。 うわ、さすが昔のゲームだな。 「これは…まさか、あゆみさんの？」 「そうだ。色々中のデータを調べたが、メモとボイスメッセージに浄化のことが書いてあったんだ。君たちにこれを託すからお札探しのために使ってくれ」 こうして俺達はあゆみのスマホを手に入れた。