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【番外編】9.配役決定&ゲームスタート
スマホの他に、おっさんはもう一つ手渡してきた。
「これがお札だ。1枚だけ私が手に入れたものだから持っていってくれ」
白い紙に筆で文字が書かれていて、真ん中に朱印が押してある。
裏を見ると、ペンで書かれた普通の文字が見えた。
「後藤…?」
「村役場の職員だ。彼も事件を知っていて黙っていた一人でね。今は原因不明の病で入院していて、怖くなって私にそのお札を託したんだ」
お札の裏には名前の他に、罪を告白し懺悔する内容が書かれていた。
なるほど、これを5枚集めるのか。
つまりあと4枚だ。
「それでは気をつけて。必要なことはスマートフォンに書かれているはずだ」
そしておっさんは後ろを向いて去っていった。
あのおっさんの役目は終わりってことか。
「よし、スマホを調べよう」
蚊が多いので車の中で見ることにした。
「あれ?時間が…」
「俺達帰ろうとしたのってもう23時くらいだったよね」
スマホの時刻表示では現在19:20となっていた。
時間が戻っているのか。
考えてみたら真夜中近くからゲームを初めて夜明けまでにクリアできるわけがないから時間が増えてよかった。
「未開封のメールが何件かあるな。受信時間は…19:16?ついさっきだぞ!どういうことだ、電波があるのか?」
全員慌ててスマホをチェックする。
「俺のスマホはダメだ」
「こっちも」
どうやら、この世界の電波はこの世界のスマホじゃないと受信できないようだ。
自分たちのスマホを使うのは諦め、あゆみのスマホのメールを開封してみる。
まず「ルール説明」というメールを開く。
【ルール説明】 ◯月◯日 19:16
ーーーーーーーーーーーーー
・夜明けまでにお札を5枚集めて村外れの井戸に貼るとゲームクリア
・夜明けまでにクリアできなければ屍霊に取り憑かれ、この世界から出られない
・主人公3人にそれぞれなり切ってクリアすること
「え、これだけ?」
「ふーん。この書き方だと、やっぱりゲームクリアすれば元の世界に帰れるっぽいな」
「この主人公3人になり切るってのはんだ?」
「たしかゲームでは、3人いる主人公グループのうち誰かを選択できたはずだけどな」
「俺達3人いるから、それぞれ配役しろってことか」
「あ、次のメールが"役の決定"ってタイトルだよ」
俺は次に「役の決定」というタイトルのメールを開く。
【役の決定】 ◯月◯日 19:16
ーーーーーーーーーーーーーー
・ゲーム中は以下3名の主人公役になりきること
・メールフォームにプレイヤーの名前を入力し、写真を添付して送信すること
ユイ:夏休み中に都会から幼馴染と肝試しに来た好奇心旺盛な女子大生。19歳。
レン:ユイの幼馴染。頭脳明晰な大学生。19歳。ユイのことが好き。
ヤマト:ユイの幼馴染。19歳。スポーツ好きな大学生。19歳。ユイのことが好き。
ユイ役→名前:
添付ファイルを選択
レン役→名前:
添付ファイルを選択
ヤマト役→名前:
添付ファイルを選択
「え、写真添付すんの?」
「何の意味があるんだよ…」
「しかも一人女じゃん。どうする?」
「じゃんけんするか」
「待って、"補足"ってやつも読んでからにしよう」
最後に「補足」というタイトルのメールを開く。
【補足】 ◯月◯日 19:18
ーーーーーーーーーーーーー
・屍霊に捕まると生気を吸われ、体力が0になるとゲームオーバー
・体力の回復はユイのキスにより可能
・屍霊の接近はユイの体調変化で察知できる
・屍霊は目は見えるが音が聞こえない。なので身を隠せば一時回避できる
・屍霊はお札に人間が近づくと襲ってくる
「タイミリミットだけじゃなく生気吸われてゲームオーバーもあるのか」
「つーかユイのキスで体力回復ってなんだ?どんなアホ設定だよ」
「こんな設定、ゲームにあったかなぁ?」
記憶を辿るが思い出せない。
ん?待てよ。役になりきるってことは体力減ったらユイ役の人とキスするってこと?!
「あと、ユイの体調変化で接近察知ってのもなんだろうな?」
「さあ…?」
とにかく、配役を決めてメールフォームを送信しないとゲームをスタートできないようなので、俺達はじゃんけんをした。
勝った順に役を選べることにしたが、まず佑成が勝って頭脳派のレンを選んだ。
そして剣志と二人でじゃんけんして俺が負けた。
剣志がユイを選ぶはずもなく、スポーツマンのヤマトを選んだ。
俺はがっくりと項垂れた。
「最悪…俺がユイかよ…」
「まぁ、妥当だろ」
「どこがだよ!」
「でも俺と剣志がキスとか冗談でもありえないでしょ?」
佑成はにこにこしている。
「ぐっ…」
それはそうだけど…
二人に体力減られたら困る。
最後まで屍霊に捕まらないでクリアしてもらわないと。
ったくなんなんだよこのクソ設定!
俺達はお互いの写真を撮影して、メールフォームに添付して送信した。
登録完了メールが来てそこに記載のURLを開くと「ゲームスタート」ボタンがでてきたのでクリックした。
するとどういう仕組みかわからないが、勝手にアプリが起動した。
『屍霊村』のアプリで、現在地のわかるマップ画面が開いた。
「うわ…これ見ながらやるってことね」
「よし。なんとか夜明けまでにクリアしよう」
「うん」
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