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【番外編】10.あゆみの自宅訪問

俺達はマップを見て、まずあゆみの家に行ってみることにした。 父親が事件を揉み消した関係者なら、家にお札があるかもしれない。 「いきなり俺たちが行って大丈夫なのかな?」 俺が不安になって2人に聞くと、佑成が答えた。 「友達だから線香あげさせてくれって言えば行けると思う」 なるほど。 マップに従い家の少し手前で車を停めた。 外に出て、剣志に声をかけられる。 「あれ?お前そんな服着てたか?」 「へ?」 自分の身体を見下ろすと、見たことのない服を着てる。 「わっ!?何これ!?」 膝上の白いショートパンツに杢グレーのパーカーという姿に変わっていた。え、これまさか女物? 「ユイの服に変わった…?最悪…。ん?あれ、剣志もこんな服じゃなかったよね?」 剣志はデニムを履いてたはずだが、ハーフパンツに黒のTシャツになってた。 佑成もポロシャツなんて着てるの見た事ないのに紺色のポロシャツを着て眼鏡をかけてる。 「ぶっ!!!!メガネ!何その真面目感…!」 そういやレンは頭脳派役だったもんな。 度は入ってなくて、伊達らしい。 まあ、どんな格好でもイケメンはイケメンだけど。 それより俺の服装がヤバい。 「はぁ…24歳の男がこんな格好で女の子の家行って大丈夫かな。通報されない?」 「似合ってるよ」 ニヤニヤした剣志に揶揄され、ムカついて低い声で嗜める。 「やめろ」 「でも違和感ないよ。いっちゃん色白だしあんまり筋張ってないから脚だけ見たら女の子に見えなくもない」 「お前もやめろ、つーか足触るな」 佑成まで何言ってんだ。 「多分村人にはいっちゃんがユイに見えるんだよ」 だといいけど… 気を取り直して、あゆみの家のインターホンを押す。 駐在所なので自宅と交番がくっ付いたような建物になっている。 しばらくして、憔悴しきった様子の40代くらいの女性が出てきた。 「どちら様でしょう…」 佑成が答える。 「あの、俺たちあゆみさんの友人で…この度はご愁傷様でした。お線香を上げさせて頂けないかと思いまして」 「まあ、それはわざわざありがとう。さぁ、上がってください。散らかってますが…」 うまく中に入れた。 室内は謙遜ではなく本当に散らかっていて、母親の精神状態のヤバさが表れていた。 3人で仏壇に手を合わせる。 母親がお茶出してくれた。 「娘のお友達のことを知らなくて恥ずかしいんだけれど、今日はどちらから?」 「あ、えっと俺…じゃないや私たちはT市から来ました」   お札の手掛かりを掴まないとと思っていたら佑成が口を開いた。 「すみません、ところでご主人のことでお聞きしたいのですが、今ご主人は…?」 「主人ですか。主人は交通事故で意識不明になっていて…まだ病院に…」 ああ、霊に襲われて怪我したって被害者の1人なわけか。 「不躾なことをお聞きしますが、お札を見かけませんでしたか?私たち訳があってあゆみさんに頼まれてお札を探してるんです」 「お札?さあ…でもそういえば娘が生前私に預けていたものがあったわ。今持ってくるわね」 あゆみの母はどこかへ消え、しばらくしてまた戻ってきた。 「これ。もし村の外からお友達が訪ねてきたら渡して欲しいって頼まれていたんです」 一通の手紙を渡された。 「そうですか、お預かりします」 俺たちはあゆみの自宅を辞した。 車に戻り、開封する。 “CC08gy4aa” 「なんだこれ…?数字?」 「パスワードかな」 俺の剣志が首を捻ってると、佑成が声を上げた。 「あっ!そうだ」 そしてあゆみのスマホを手に取りアプリを開いた。 「さっき適当にアプリを見てたらパスワード入れないと開かないとこがあったんだよ」 俺と剣志は画面を覗き込む。 「えっ、どれ?」 「これだ」 佑成は手紙を見ながらパスワードを入力する。 「開いた!」 画面に一行の文が表示された。 “駐在所ロッカー 4963” 「駐在所ロッカー…そうか、お札はそこにあるんだ!」 「行こう」 俺たちはまた車を降りてさっき出てきたあゆみの自宅…つまり駐在所に引き返した。

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