63 / 86
【番外編】14.体力回復と神社
「剣志はどこかな?」
「おーい!剣志!!」
村長の執務室の窓は建物の裏側に面していて、芝生の向こう側が林になっていた。
「あの林の中に隠れてるのかな」
「行ってみよう」
ガサガサと道の無い林をかき分けて入っていく。
俺ショートパンツだから草とか刺さって痛いんだけど。
虫にも刺されそう…
「剣志~!おーい!返事してくれ!」
少し奥まで進むと、池があった。
「剣志ー!」
「おーい!」
いないなぁ。どこに行っちゃったんだ…?
ガサガサッ
「!?」
「剣志か?」
「うぅ…ここだ…」
「剣志!」
倒木の陰に剣志は隠れていた。
「よかった。え、大丈夫!?」
「ああ…なんとか……でもあいつに一回捕まって…」
暗闇で懐中電灯の灯りしかないが、顔色が悪くしかも身体を起こせないほど消耗しているようだ。
佑成が思い出して言う。
「いっちゃん!ユイのキスだ」
あ、そうか。剣志はあゆみの霊に生気を吸われたんだ!
「わ、わかった」
俺はかがみ込んで剣志の顔を両手で挟み、キスをした。
するとみるみる剣志の顔色が良くなっていった。
な…なんだこれ……すげー。
「ん…っ?」
ガシッと頭を掴まれ、剣志の舌が口の中に入ってきた。
え…?これ、ここまでしないとダメなの!?
「ん…」
剣志のキス、気持ちいい。
しばらくクチュクチュと口の中を動き回っていた舌が引っ込んでいき、俺は口を離した。
「はぁ、はぁ。どう?体力戻った?」
「ああ。俺はこのゲームの設定を褒めたいよ」
剣志は起き上がった。
「バカじゃないの…」
俺は呆れてため息をついた。
心配して損した!
駐車場に戻って車に乗り込み、俺は後部座席で横になった。
こんなの、夜明けまで身がもたないよ。
何回この”体調の変化”や”体力回復”を体験したら元の世界に帰れるんだよ。
「これでお札が3枚になったな」
「あと2枚か」
「次はヒントも無いし、神社に行ってみるか?」
村長のお札を手に入れた俺たちは、次に
神社へ向かうことにした。
神社は、近づくと何かに追いかけられるという噂もあり明らかに怪しい場所だ。
お札の裏の懺悔内容を読むと、村長はレイプ犯ではなく、事件を揉み消した一員ということだった。
とすると、まさか神主が…?
神職でありながら、そんなことをするだろうか。
「うーん、車で行けるのはここまでかなぁ」
地図ではこの先に神社があるのだが、道が狭くなっていて車では行けそうになかった。
歩くしかない。
「薄気味悪いなぁ」
「いかにも出そうな感じ」
「追いかけられるって…何に?霊?」
草木の生い茂る林道を歩く。
虫の声がリーンリーン、チリチリ…と聞こえている。
不意にガサガサッと音がして俺は飛び上がった。
「ぎゃっ!」
「ただの鳥だよ」
「もう無理~帰りたい…」
草をかき分けて進む。
「神主が犯人かな?」
「多分そうじゃね」
リリリリ…ゲコ、ゲコ、ゲコ…
蛙の声もする。こんなゲームの中じゃなければ風流な田舎の夏の夜なんだけど…
「あ、鳥居だ」
しばらく歩いたらようやく鳥居が見えてきた。
今のところ、屍霊の襲撃は無い。
鳥居を抜けて、社務所を探す。
「あ、あそこ!灯がついてる」
どうやらあそこが社務所のようだ。
神主が居るといいんだけど。
引き戸を開けて中に声をかける。
「すみませーん。ごめんくださーい!」
「こんばんは~!」
少し待つと、奥から人が現れた。
40~50代くらいの、爬虫類顔の男性だ。
「こんばんは。どうかしたかな?」
「あの、あなたが神主さんですか?」
「はい、そうですよ」
「あの…小林あゆみさんのことでお話があるんです」
俺たちの顔を見回して神主は笑顔を見せた。
「どうぞ、入って」
俺たちは社務所内に案内された。
ともだちにシェアしよう!