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【番外編】17.あゆみの友人

俺達はお札を手にして車に戻った。 神主のお札の裏には、あゆみをレイプしたことの懺悔も書かれていた。 このお札を集めて井戸に貼れば霊現象が収まるなら、お札の作成者である神主が集めて貼るのが一番手っ取り早いはず。 なのにやらなかったのは、このお札が井戸に貼られて万が一誰かに裏面を見られると自分の罪がバレるからだ。 車内に戻ってから寝ている間に起きたことをざっと話すと、佑成が心配そうに俺の頭を撫でてきた。 「いっちゃん大変だったんだね。可哀想に…」 「今回ばっかりはあゆみの霊に感謝かなぁ」 あゆみの霊が来なかったら、俺は神主にやられてたかも。 「しかし、霊も犯罪者も頭がイカれててよくわからないゲームだな。これは売れないだろ」 たしかに…。 「さあ、雑談はそこまでにして最後のお札を探そう」 「あゆみのスマホの電話帳は…と。これだな」 全部で180件ある。 「これ、どうやって絞ればいいんだ…?」 「アプリのマップに載ってる村人以外は除外だろ。それならそこまで多くないはず」 アプリのマップを見る。 この村の世帯数は全部で88戸って書いてるから… 「半分くらいに絞れたか。この中であゆみの友人ってどれなのかな」 「電話帳の登録名がフルネームじゃなく下の名前だったりあだ名になってるのは怪しいよな」 「じゃあまずあだ名系にかたっぱしから電話するか」 「今何時?」 スマホの時計を見る。 「1時過ぎだね。電話するにはめちゃくちゃ非常識」 「でも、この時間でも出る相手ってことだろ。ゲームなんだし」 というわけで「あ行」から掛けていくことになった。 スピーカーにして、会話はレン役の佑成が担当する。 最初の2件は電源が切れてると言われて通じなかった。 その次も、コール音だけが鳴って、誰も出ずに留守電に変わった。 「出ないな」 「次行こう。えーっと…エミってやつかな」 何度かコール音が鳴る。きっとこれも留守電になるだろうと思ったとき画面が通話中の表示に変わった。そしてしばらくの沈黙の後に相手の囁くように小さな声が聞こえた。 「……だ、誰…?」 俺達は顔を見合わせ、頷き合った。 佑成が喋りだす。 「もしもし、切らないでくださいお願いします」 「ひぃっ…!だ、誰なの?これ、あゆみの番号…」 「はい。僕はあゆみさんの友人です」 「あゆみの…でもどうしてこの番号を?」 「あゆみさんのスマホを預かった人がいて、その人に協力しているんです。僕はレンといいます。あなたはエミさん?」 「はい…」 「あゆみさんの死の真相を探っていて、この番号にたどり着きました。あなたは…お札のことを知っていますか?」 「…………いいえ…」 佑成がチラッと俺達の方を見る。 俺も剣志も首を振った。 どうも、エミは嘘を付いている感じがしたからだ。 「正直に答えて下さい。お札がないとこの先もずっとこの村は幽霊に怯えて暮らすことになるんですよ。お札はどこです?」 「………ぅう…ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃいい…」 また3人で顔を見合わせた。 俺は首をかしげ、剣志は肩をすくめている。 佑成がまた話しだした。 「あゆみさんのレイプ事件のことをあなたは知ってたんすね。犯人が誰かも」 「…はい…」 「それであなたもお札を1枚持ってるんですね?」 「うぅ…うぅっごめんなさい。ちがうの、ちゃんと証言するつもりだった!ごめんなさい」 「エミさん!」 「はい…。今ここにあります」 最後の一枚が見つかった。 剣志がスマホを指さしてステアリングを握るジェスチャーをする。 場所を聞いてこれから向かおうと言ってるんだ。 「エミさん、これから僕たちが君の家に行くのでお札を渡してもらえますね?」 「はい…はい、お願いします」 そしてエミからフルネームを聞いてマップで自宅の位置を確認した。 ここから7~8分の距離だ。 着いたらまた電話をし、エミが外までお札を持って出て来てくれることになった。 「よかった~何十件も電話するはめにならなくて」 「本当に、ラッキーだね」 「サクッと受け取って貼りに行こう!これなら時間も余裕だね」 話しているうちにエミの家に着いた。 家の玄関が見える、少し離れた位置に車を停めた。 もう一度電話を掛ける。 エミはすぐに行くと言って電話を切った。 「どうする?3人で行く?」 「電話口に出てたのは佑成だけだけど…」 「あまり警戒されたら困るし、俺一人で行ってみるよ」 「わかった、ここで見てるから。気をつけてね」 佑成が一人で車を降りた。 佑成が家の前に着くと、塀の内側から少女が顔を出した。 俺は剣志とその様子を見張っている。 「あ、あれがエミだね」 「ああ」 佑成とエミで会話している。 「何だろ?受け取るだけなのに…」 「喋ることなんて何かあるか?」 「神主のこととか聞いてるのかな」 なかなかお札を受け取る様子がないので、俺と剣志は身を乗り出して窓から佑成のことをじっと見ていた。 すると、エミが佑成の肩に手を置き顔を寄せた。 「え?!」 「兄貴…?」 二人がキスしているのだ。 なんで?! 「な、なんでキスしてんの?」 「どういうことだ?」 「どうしよう、助けに行く?」 「そうか、さっきの一樹の話だと霊は霧になって人の体に入り込めるって…」 俺達は慌てて車を降りてダッシュで佑成の元へ駆けつけた。 距離が近づいくにつれ、俺の身体もだんだん熱くなってきた。 「うぅ…剣志。熱くなってきた…やっぱりあゆみが…霊が来てるよ…!」 「熱いんだな?くそ、兄貴一人で行かせたりしなければよかった!」

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