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【番外編】18.最後のお札と佑成の危機

「兄貴!!」 「はぁ…はぁ…佑成、どうしたの…?!」 俺達が名前を呼びながら駆けつけても、二人はこちらを見もせず、口も離さなかった。 絶対おかしい。 「おい!お前何してるんだ!!」 剣志が二人の間に割って入ろうとするが、力を入れても引き離せない。 俺も加勢するけど、女の子の力とは思えないくらいのパワーで佑成にしがみついていた。 「佑成!……おい、…佑成!!!!」 俺は佑成の顔を叩いて目を覚まそうとした。 でも、青白い顔で気を失っているようだ。 「おい、やばいぞ。早く引き離してユイのキスで体力回復しないとゲームオーバーになっちまう!!」 どうしよう、もしここでゲームオーバーになったらこの世界に取り残されるの? 佑成はどうなっちゃうの!?? 剣志がエミを、俺が佑成を後ろから羽交い締めにして引っ張ってもびくともしなかった。 「どうしよう剣志、全然外れないよぉ」 そもそも俺は、身体に力が入らなくて戦力にもならない。 「何か無いのか…?考えろ!」 「だって…だって…えっと…あゆみを離すためには…」 俺はぼーっとする頭で必死に考えた。 あゆみは何を追ってここまで来た…? 俺達そのものじゃない。あゆみが追ってるのは… 「あ!お札は!?」 エミのお札がどこかにあるはずだ。 あゆみはお札に近づく者を襲うんだから、お札を持って俺達がここから離れれば、あゆみの霊が取り憑いたエミもきっと離れてくれるはず! 「そうか。お札を持って俺が走ればあゆみの霊がこっちを追ってくるかもしれないな」 「うん。俺は…ごめん、走れそうもない」 「任せろ。それより、どこだお札は?」 あゆみの服のポケットを二人で漁る。 「あった!」 小さく折り畳まれたお札が剣志の探ったポケットに入っていた。 「よし、俺はこれを持って走る!その間に兄貴の回復を頼む」 「了解!剣志もさっきみたいに捕まらないでよ!」 「ああ」 剣志はお札を持って走っていった。 するといくら引っ張ってもキスしたまま離れなかったエミと佑成がやっと身体を離した。 そして、エミの身体の口や鼻の穴、耳の穴から白っぽい煙のようなものがふわふわと出ていって剣志の走り去った方向へ流れていった。 剣志、上手く隠れて逃げ切って…。 一方俺はエミから離れた途端青白い顔でくずおれそうになった佑成を後ろから支えて床に静かに降ろす。 そのまま佑成の唇にキスした。 さっき剣志にキスしたときはすぐに何かの力が相手に流れ込んだのを感じたが、その感じがしない。 「なんで?佑成…お願い起きて…!」 まさか、死んじゃったらキスしても無駄とか? 俺は首に指を当ててみる。脈がない!! やだ…待ってよ!! 「佑成!!佑成!!!!」 俺は泣きながらまたキスした。お願い…お願いだから助けて…! だめだ。 どうしよう、どうしよう… 俺は袖で涙を拭った。 もう、ゲームとかよくわかんないからやれることをやるしかない。 こんな変なゲームの中で死なせられるかよ!! 俺は腕まくりして、心臓マッサージを始めた。 両手を重ねて手のひらで胸を押す。 「いち、に、さん、し、ご、ろく………さんじゅう!」 2~30回圧迫してから口に息を吹き込む。 「ふーっふーっ!」 佑成…佑成頑張って…! 「いち、に、さん、し、ご………さんじゅう!!」 「ふーっふーっ!」 いち、に、さん、し、ご、ろく…… 何度か繰り返したとき、息を吹き込んだ瞬間にさっきと違う手応えを感じた。 なんか来た! 俺はマッサージをやめて人工呼吸の方に集中する。 するとキラキラした光に包まれて、俺の方から佑成の口の中に光が流れ込んだのが見えた。 「ゴホ!!!!ゴッホ!!!げほ、げほ…」 佑成が息を吹き返し咳き込んだ。 よ…よかったぁ……! 「はぁ…はぁ…よかった…よかった…はぁ…はぁ…」 俺も汗だくで地面に手をついた。 膝立ちでアスファルトの上で心臓マッサージをしていたので、素足の膝は傷だらけになっていた。 でもそんなのどうでもいいくらい安心した。 「いっちゃん…ごほっ。助けてくれてありがとう…ごほごほっ」 俺は無言で佑成を抱きしめた。 そしてまだ青い顔をしている佑成に、俺はキスした。

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