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第44話 おかえり
でも最後に言いたい
「五十嵐さん心の底からありがとう、優しくしてくれて本当に本当に感謝だよ。もう俺のことは忘れて素敵な家族を持ってね、さようなら」
三途の川を渡ろうとしたその時
「それ、ちゃんと俺に向かって言ってくれない??」
後ろをばっと振り向くと一番会いたい五十嵐さんがいた
感情がこみ上げ目からはぶわぁと涙が溢れた
「う…うぇ…なんでいるの?」
五十嵐さんは千鶴に近づき
優しい掌で頭と体を引き寄せ抱きついた
嗚咽がとまらない
「心配した、本当に帰ってこなかったらどうしようかずっと考えてた、俺も千鶴がいたから仕事辛くなくなったし、幸せだなと感じるようになった
全部感謝の気持ちだよ…本当にありがとう、でもいなくなるのはまだ早いぞ」
「え…うぇぐすん」
「帰っておいでよ、みんな待ってるよ、みんな千鶴のこと大好きだから、いなくなっちゃったらみんな悲しむよ」
「ふんん…でも…もう帰れないよ」
「帰れるよ、だから一緒に帰ろ」
五十嵐さんの掌の中にある光の玉が光り目を瞑り開けると
「白い天井…とみんなの顔」
「おかえり、千鶴」
「成瀬!おかえり!」と早川が抱き着いてきた
「もう心配したよ、全然目覚まさないなんて、本当によかった」
「マスター」
「うちの稼ぎ手だからね」
「あ”…ハハ」
辺りを見回すと知らない人もいた
それに
「あっ日向さん?」
みんなの合間を縫って歩いてきた
「初めまして、小野寺拓海 です、日向は偽名で使っていました」
「あ…あのやっぱり窓の清掃したときに爆弾セットしたんですか?」
「はい、気が付いていましたか…まだ修行が足りません…」
「あ…いやでもあれで俺は逃げられたのでよかったです、ありがとうございます」
「いえ、もう少し早く助けられればよかったと思ってます」
「あっでも俺も日向さん…じゃなくて心配してくれる小野寺さんの手はらいのけちゃったのでごめんなさい」
「気にしないでください」
と言い下がる
あとお姫様抱っこされて寝てるあの人はいったい誰なんだろ…
気になるけど今は
五十嵐さんのほうを向き
「おかえり」
と掌で頭を撫でてくれる
「ただいま、また助けられました、ありがとうございます」
「うん、なんで俺が三途の川いたか不思議じゃない?」
「あっそういえば!!なんでですか?」
五十嵐さんが指でさす
さっき気になった人たちだ
「今お姫様抱っこで寝てる人、あの人ね不思議な力があって三途の川を渡ろうとしていた千鶴のところまで俺を飛ばしてくれたの、なんだっけなー夢見なんとかって力、本当は自分以外の人を飛ばすのって契約違反で自分にいろいろ跳ね返ってくるんだって…」
「え!そしたら」
「うん、だから今彼が眠りに着いちゃったの」
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