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ふたりの出会い
「しかしまぁ、あん時は肝を冷やしたぞ」
再びすやすやと眠りはじめた奏音の寝顔をそっと伺いながら、伊澤が根岸の隣に腰を下ろし、熟睡していることを確認すると、甘えるように体をぴたりと寄せた。
男も刑事が張り込んでいることに気が付いた。
「それ以上近付いたらこのガキの頭が吹っ飛ぶぞ」
男の子の首根っこを乱暴に掴むと、ポケットから取り出した拳銃を突き付けた。
「随分と威勢のいい兄ちゃんだな」
龍一家の組長、卯月上総がやれやれとため息をつきながら一緒にいた女性たちに先に行けと指示をした。
「先代は、姐さんに隠れて飲み屋の若い姉ちゃんたちと温泉旅行の帰りだった。バレたら姐さんに半殺しにされるから、無視してやり過ごそうとしていたが、そうとは知らない根岸が飛び出したもんだから名乗るしかなかったんだ」
当時のことを思い出したのか、伊澤がぷぷと笑い出した。
「命を大事にしろって言われて、悠仁の顔がまず先に浮かんだ。出会ったばっかの俺みたいな赤の他人を心配してくれて、真剣に怒る伊澤の顔が可愛いく見えた。考えてみたら一目惚れだったのかもな」
「は?」
寝耳に水だったのだろう。
伊澤が驚いたように体を起こした。
「奏音が起きたらイチャつけねぇだろう。静かにしろ」
人差し指を唇の前に立てた。
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