6 / 14
ふたりの出会い
「ばかやろう。いい年して……」
あっという間に腰を引き寄せられ。
「こらっ……」
名前を呼ぼうとした開いた唇に、根岸の唇が押し付けられた。
絡まってくる舌から、根岸が愛飲する煙草の匂いが伝わってきた。
「ん……」
貪るような激しいキスに、若干の息苦しさを覚えながらも伊澤は懸命に応じた。
上顎を刺激され、歯列の裏を探られ、濃厚かつ執拗な口付けは、伊澤を芯の部分から熱くしていく。
「根岸、駄目だ。奏音が起きる」
もぞもぞと動く奏音に現実に一気に引き戻される。
「今さら止められる訳ネェだろう。俺のために59年間綺麗な体のままでいてくれたんだ」
すぐにまた口付けがはじまり、ラグマットの上に縺れ合うように倒れ込んだ。
触れられていなくても、足の間の欲望は熱を溜め、重なりあった体のあいだでその存在を誇示しはじめる。
それが恥ずかしくて伊澤がもじもじすると、
「お前だけじゃねぇよ」
クスリと笑いながら、根岸が熱く滾った分身を布越しに擦り付けてきた。それは硬度を増してドクドクと強い脈を打っていた。
「新婚なんだ。奏音が寝てるときぐらいたまには新婚らしくすっぺ。な、伊澤」
「あ……ふぅ」
力強い手が後頭部に回り、伊澤の短い髪をかきむしりながら、さらに深く唇を重ねてきた。
死ぬまで伊澤とは一生仲のいい友人関係を続けるつもりでいた根岸。
そんな根岸の背中を押したのは未知だった。
「人を好きになるのに年齢なんて関係ありません。伊澤さんが好きなら、好きだってちゃんと伝えなきゃ。根岸さん、伊澤さんと幸せになって下さい!」
未知の必死な訴えに、それまで頑なだった根岸の心がはじめて揺れた。
ともだちにシェアしよう!