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これからもずっと、側に

「亜優、お帰り。お前らもご苦労だった」 亜優を送ってきた若い舎弟たちに労いの言葉を掛ける根岸。ポケットから万券をすっと取り出すと、 「これでみんなで飯を食って帰れ」 手に握らせた。 「本部長いつもありがとございます」 「だからもう本部長じゃねぇって」 ぺこぺこと腰を九の字に曲げ頭を下げる舎弟たちに、照られながらもゆっくりとドアを閉めた。 昔、伊澤に面倒をみてもらったように、今は、亜優の面倒をみている根岸。 生まれも育ちも中国。地竜が黒竜から助け出し、遥琉に有無言わさず押し付けた。いわば、お荷物だった亜優。 ワンという名前は犬みたいで可哀想だ。 遥琉が9番目を意味するジウに、さらには亜優という名前に改名させ、息子として引き取った。 構ってもらいたくて、振り向いてもらいたくて、わざと怒られるような悪戯ばかりしている。 「土産か?ありがとう」 蛙くらいでは驚かない根岸。 「変わった色だな。どこで 見付けてきたんだ?奏音が起きる前に逃がさねぇとギャン泣きされるぞ」 言葉は全くといっていいほど通じない。 根岸も伊澤も中国語がさっぱり分からない。亜優も日本語か全く分からない。 ゼスチャー、顔の表情、目の動き、ほんの些細なことでもヒントになるから、見逃さないように亜優の顔をじっと見つめると、亜優もまた憧れの眼差しで根岸を見つめ返す。 夕御飯の準備をしながら、伊澤は仲のいい二人を複雑な心境で見守っていた。

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