8 / 14
これからもずっと、側に
「亜優、お帰り。お前らもご苦労だった」
亜優を送ってきた若い舎弟たちに労いの言葉を掛ける根岸。ポケットから万券をすっと取り出すと、
「これでみんなで飯を食って帰れ」
手に握らせた。
「本部長いつもありがとございます」
「だからもう本部長じゃねぇって」
ぺこぺこと腰を九の字に曲げ頭を下げる舎弟たちに、照られながらもゆっくりとドアを閉めた。
昔、伊澤に面倒をみてもらったように、今は、亜優の面倒をみている根岸。
生まれも育ちも中国。地竜が黒竜から助け出し、遥琉に有無言わさず押し付けた。いわば、お荷物だった亜優。
ワンという名前は犬みたいで可哀想だ。
遥琉が9番目を意味するジウに、さらには亜優という名前に改名させ、息子として引き取った。
構ってもらいたくて、振り向いてもらいたくて、わざと怒られるような悪戯ばかりしている。
「土産か?ありがとう」
蛙くらいでは驚かない根岸。
「変わった色だな。どこで 見付けてきたんだ?奏音が起きる前に逃がさねぇとギャン泣きされるぞ」
言葉は全くといっていいほど通じない。
根岸も伊澤も中国語がさっぱり分からない。亜優も日本語か全く分からない。
ゼスチャー、顔の表情、目の動き、ほんの些細なことでもヒントになるから、見逃さないように亜優の顔をじっと見つめると、亜優もまた憧れの眼差しで根岸を見つめ返す。
夕御飯の準備をしながら、伊澤は仲のいい二人を複雑な心境で見守っていた。
ともだちにシェアしよう!