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これからもずっと、そばに
「妬いてねぇよ。妬くわけないだろう。と言っても言葉が通じないか」
不思議そうに首を傾げる亜優に伊澤は、
「そんなに蛙が好きなら、ネギと奏音も連れて、今度モリアオガエルでも見に行くか」
天然記念物で川内村の平伏沼(へぶすぬま)ってところに生息している。伊澤がスマホを操作しモリアオガエルを見せてやると、亜優の目がキラキラと輝きだした。
「奏音の蛙嫌いと虫嫌いをまずは克服しないと駄目だな」
伊澤がよし、帰るぞ。亜優を促すと、ピョンピョンと元気に飛び跳ねる蛙に笑顔で手を振り、すっと立ち上がった。
「また、爪を食ったのか?駄目だろう。血が出てる」
伊澤がそのことにすぐに気付き、ポケットから絆創膏を二枚取り出すと、親指と人差し指にぺたっと貼った。
「俺もネギもいるし、オヤジと姐さんもいる。寂しくないだろう。といっても、マーを一人占めするのが難しいからな。ほら、もうこれで大丈夫だ。飯にしよう」
伊澤が亜優を連れて帰ると、奏音が慌てて根岸の背中に隠れた。
「そういえば悠仁も蛙と虫が大嫌いだったな」
当時のことを思い出したのか、根岸の表情がふっと和らいだ。
「奏音みたく、根岸の背中に隠れて、怖くてぶるぶると震えていた」
「そんなこともあったな」
思い出話しに自然と花が咲き、視線が絡むと笑みが零れた。
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