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春の来訪者 5 ※

「んっ⋯⋯ふ⋯⋯う」   熱い舌に優しく口の中をかき回され、お互いの唾液を飲み込む。自分の中から愛しさが溢れて涙が幾つも零れていく。  ヴァンテルの背中に手を回して抱きしめれば、強く抱き返された。  ぴたりと合わせた肌の間で、金の細鎖がほんのりと熱を持つ。鎖の先にはロサーナの紋章がついていた。  王家の者が、こんなにも淫猥な姿を晒している。そんな感情が不意に浮かんでたまらなくなる。 「クリス、お願い。鎖を外して」 「アルベルト様」 「⋯⋯これ以上は、だめ」  ヴァンテルが妖艶な笑みを浮かべた。涙ぐむ私から体を離し、鎖の先の紋章を指ですくいあげた。紋章に美しい唇がそっと触れる。その光景は神聖さよりもずっと、淫靡さに満ちていた。 「⋯⋯クリス!」 「貴方の肌に金の飾りはよく似合う⋯⋯貴方はまさに、ロサーナそのもの」  長い指は飾りを外すことなく、細鎖が連なる場所をゆっくりたどる。そのまま肌の上に指を這わせて、私の両足をゆっくりと左右に開いた。  厚みのある舌が、ゆっくりと後孔を舐める。びちゃぴちゃと音が聞こえて堪らず腰が揺れた。体を震わせていると、指がぐちゅりと後孔に入ってくる。  ヴァンテルの指が曲げられて中をこすると、体が跳ね上がった。 「あ! んっ!! クリ⋯⋯ス!」  後孔に入った指が奥まで入り、ぐちゅぐちゅと水音が立つ。 「もうこんなに潤んでいます。すぐに柔らかくなる」  そう言いながら指が増やされ、たまらずたくましい体に縋りつく。  ヴァンテルの指に肉襞が吸いついていくのがわかり、抑えようとしても声が漏れた。 「⋯⋯ク⋯⋯リス、クリス」 「聞こえません。⋯⋯言って、アルベルト様」  蕩けるように甘い声は、どこまでも残酷で、優しい。 「⋯⋯欲しい。おまえ⋯⋯が⋯⋯ほしい!」  青い瞳の奥で、獣が満足げに微笑む。 「──いくらでも」  肉襞が快感に潤み切った頃、猛り狂う剛直がゆっくりと入ってくる。  みちみちと肉襞を分け進み、奥まで貫かれて嬌声を上げる。突き上げられるたびに、体がもっと欲しいとねだっている。  気持ちのいいところを何度も摺り上げられ、腰が揺れた。喘ぎながら小さく「いい」と呟けば、中に入った剛直が大きくなる。 「や! 大きい⋯⋯」 「貴方と言う方は⋯⋯!」  奥の奥まで突かれて、激しく挿入が繰り返される。  手前まで抜かれてはゆっくりと突かれ、再び奥を穿たれる。体は蕩けて、肉襞はきゅうきゅうと剛直に絡みついていく。揺さぶられているのか、自分から腰を揺すっているのか、もはや区別はできなかった。  何度も体を快感が突き抜け、涙が零れる。  名を呼ぶたびにヴァンテルは私を強く突きあげた。  膝裏を両手ですくわれ、腰が浮いたままで奥の奥まで熱が埋め込まれる。 「ああぁあ!! クリス!」 「──っっ!!」  どくどくと出された熱が肉襞に満ちて、体を真っ直ぐに突き抜けるような痺れに襲われた。  体が震え、波のように何度も押し寄せる快感に目が眩む。  ヴァンテルが汗を滴らせ、眉を顰めながら口づけをくれた。 「貴方に溺れ続けて死にそうです」 「⋯⋯私も。お前しか見えない」  恋人は目を見開いた後、少年のように頬を染めた。その姿に思わず笑えばヴァンテルも困ったように微笑を浮かべる。  どちらからともなく、もう一度口づけを交わした。 「アルベルト様、お願いがあります」 「ん?」 「さっさと、奴らをフロイデンに帰してもいいですか?」 「まだ、何の話し合いもしていないと思うが」 「⋯⋯」  私は、美しい恋人を宥めるように背中に両手を回した。  ヴァンテルは、私の首元に顔を埋めて、そっと瞳を閉じる。  いつの間にか、愛しい者と体を寄せ合って柔らかな寝息をたてていた。  私はこの時、少しも予想していなかった。  この後、不機嫌なヴァンテルと上機嫌な来訪者たちの戦いが長く続くことを⋯⋯。  

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