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雛の王子 2 長夜(2) ※

「お叱りを受けそうですが⋯⋯」  もうとっくに怒っていると呟けば、ヴァンテルの眉が下がった。 「⋯⋯泣いてらっしゃるお姿にも、そそられます」  ドン!と思いきり胸を叩いても、少しも効いている様子が無い。 「⋯⋯ばかッ!」 「好きです、アルベルト様」  ふるふると体を震わせていると、瞼、目尻、頬と次々に口づけが降ってくる。  いつの間にか、ヴァンテルの長い指が私の雄を包み込んでいた。人差し指と親指で輪を作り、優しく擦り上げられる。 「っあ!」  ヴァンテルの手の中で、私の雄はたやすく形を変え、天を向く。  男にしては頼りなげだと思うのに、まるで宝を愛でるように丁寧に扱きあげられ、あっという間に口に含まれた。  両足を開かれ、温かい咥内に含まれた瞬間に、先走りがびゅるりと溢れ出る。喉の奥まで深く飲み込まれ、舌でゆっくりと嬲られる。 「あっああッ! ク⋯⋯リス!!」  自分の腰が揺れるのがわかる。たまらなく恥ずかしいのに、同じ位気持ちが良かった。  弾けそうになっている雄を口から出されては含まれ、狂おしい気持ちだけが募る。  ヴァンテルの口の中ではちきれんばかりに膨れ上がった時、後孔につぷりと指が入れられた。ぬるりと粘度の高いものが指先に纏わりつき、ぬちぬちと中に押し入っていく。 「あ⋯⋯や! なに?⋯⋯」  私の雄から口を離し、ヴァンテルはにっこり笑った。 「蜜を混ぜた膏薬を作りました」 「なんで、そんな⋯⋯の!」  指先から肉襞の中にじわじわと熱が広がり、まるで解けるように柔らかくなるのが分かる。粘液が溢れ出して、くちゅくちゅと水音がたつ。  指が増やされ、こりりと硬い一点を潰されて体が跳ね上がった。 「クリス⋯⋯クリス! もう出るッ!! あああ!」  前と後ろを同時に責め立てられて、堪らず白濁が迸った。  ヴァンテルが音を立てて飲み干した時には、私は捕らえられた魚のように体を跳ねさせるだけだった。  はぁはぁと息をつきながら、長椅子に体を任せていると、ヴァンテルが起き上がる。  美しい獣が歌うように告げる。 「アルベルト様。⋯⋯夜は、これからです」  長椅子の背を必死で掴み、逃げようとしても、少しも許されはしなかった。  焼けた鉄を思わせる熱く硬い杭が何度も後ろから打ち込まれる。 「あッ! ああ! もう無理⋯⋯」 「たまらない⋯⋯。アルベルト様、こんなに蕩けていらっしゃる⋯⋯」  ヴァンテルの剛直が後孔に突き入れられるたびに、肌を打ち付け合う音が部屋に激しく響く。  中で出された白濁が溢れ、混じり合った粘液が内腿を伝い落ちていく。  いつのまにか絨毯にまで滴り落ちて、見る間に染みが広がった。 「ああ、こんなに溢れてしまって⋯⋯。明日、絨毯はレビンに替えさせましょう」 「や! ⋯⋯やだっ」  ヴァンテルは時々、ひどく意地悪だ。羞恥に震えるようなことを、わざと言う。  一際激しく突き上げられたかと思うと中がうねり、思わずヴァンテルを締め上げた。 「あっあああ!」 「ッ! アルベルト様っ」  頭の中が熱く、白く溶けていく。全身の力が抜けて、もう何も考えられはしなかった。  ふと目が覚めた時には、絹の寝間着を纏って、自分の寝台にいた。  すぐ隣には、静かな寝息をたてている美しい男がいる。整った顔は穏やかで、昨夜の痴態などまるで何も知らぬかのようだ。  体はどこもさらりと清潔に拭き上げられている。  昨夜も、クリスが運んでくれたのだろう。  情事の後に気を失うように倒れた時。  ヴァンテルはいつも、私の体を丁寧に清めて服を着せ、寝台まで運んでくれる。そして、腕の中に抱え込むようにして眠るのだ。  小鳥のさえずりが聞こえ、部屋の中には白い光が差し込んでいた。  もう少し眠ろうかと、愛しい恋人の体に手を回そうとした時だった。

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