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第3話
「侑、シャワー浴びた?」
輝の部屋に侑一が来るなり、ベッドの上に二人して座る。
発情期の時は感覚が鋭敏になるらしく、特に人の匂いの違いに気がつきやすくなる。侑一から、石鹸の匂いがした。不快な匂いではもちろんないのに、侑一の匂いが薄まっていて、もったいないなと思う。
「ああ、軽く」
そんなことしなくても良かったのに、と言うと侑一は笑った。
「そんなに早く欲しかったのか?」
服を脱ぎながら覆い被さってくる男を、輝は両腕で抱き止める。
「ん……欲しい」
素直に言えるのは、親友だからだ。
侑一が発情期の俺を抱くようになったのは、輝にとって二度目の発情期の中学一年生のときから。一度目からずっと期間が空いたのちに始まったそれは、まさしく「発情」だった。あれから侑一に抱かれるのはもう何度目になるだろう。
「すっかり、俺の形に馴染んだよな」
感慨深げに言う侑一に、輝は恥ずかしいことを言うなとべしっと叩いた。
「そりゃ、四年もしてりゃそうなるだろ!」
「いてぇ。ほら、こっち向けよ。キスするぞ」
む、と口を尖らせると、ちゅっちゅっと軽いキスが降ってくる。たまらず口をうっすら開くとわかっているというように侑一の舌が忍び込んできた。
それと同時に緩慢な動きだった腰が一気にグラインドし始める。
「んっ……んんぅ、あっ……ぁんっ」
挿入されながらキスするのが輝の好みだ。ちょっと苦しいけれど、上も下も繋がっていることに性欲だけじゃないところで安心を覚える。
「輝、気持ちいいか?」
腰を掴んでいた手が胸へと移動し、乳首をくりくりと刺激する。じん、と痺れるような快感が脳まで走り、たまらなく気持ちいい。
「あっ、ゃっ……侑ッ、それ、きもちぃ……」
知ってる、と囁いた侑一が動きをより激しくする。
「やぁん、ん、んぅ」
お互いの腹に挟まれた輝のモノからは、断続的にとろとろと愛液が溢れている。
「ぁッ、イクっ、きちゃう!」
ぎゅっとしがみつく輝に、侑一は優しくキスを落としラストスパートに向けてナカのいいところをぐりぐり突き上げた。
我慢せずに放埒を迎える。
きゅんきゅん締め付ける刺激に、侑一もまたため息を漏らすと奥に吐精した。ゴム越しだが、熱いそれに征服されるような感覚を覚えて輝の体がブルリと震える。
「は…ふ……」
「大丈夫か?」
絶頂の余韻に震える背中を優しく撫でてくれる。
「ん……だいじょーぶ」
ずる、と侑一自身が抜かれそうになるが、輝のナカはまだいて欲しいとばかりに締めつけて離さない。そんな輝に、侑一は微笑した。
「もう一度しても良いが、ゴムを変えさせてくれ」
「あ、ああ、うん。そのまま、じゃダメか」
「妊娠するかもしれないぞ?」
「そっか、それは困るな」
宥めるようにゆるゆる腰を動かしながら抜き去ると、使用済みのゴムを片付けてまた新たに開封する。
まだ硬度を保っている侑自身に、輝は指を伸ばした。
「あ、コラ」
発情時は大抵一度では終わらない。いつも二度、三度はしてしまう。
「気持ちよくしてくれたから、ちょっとしたお礼?」
一度出したことで少し気持ちに余裕が出てきた。
射精したあとだから、青臭さとゴムのにおいが混ざっているがそれはそれで興奮材料になる。
先端を舐めて、それから咥内に含む。
「んぁ……む、ン」
αである侑のモノは大きい。亀頭までは収められるがそこまでで、口に入らないところは両手で包んだ。
気持ちよさそうな吐息が上から降ってくることに気をよくする。口淫も慣れたものだ。
「どうせなら、これもつけてくれないか」
「ン、ん……」
渡されたゴムを口と手で付けてあげる。よくできた、とばかりに頭を撫でられて、輝は顔を上げて微笑んだ。
「今日は特別に上に乗ってあげるよ」
「か、可愛い」
手の中のモノがぐうっと大きくなった。
侑一は時々輝を可愛いという。
Ω性は女でも男でも綺麗な顔の人が多いとはいうし、輝も多分に漏れない。決して女性らしい丸い可愛さではないが、ぱっちりとした二重瞼が印象的で、すっと通った鼻筋、薄い唇が少し中性的で整った顔立ちだと言われる。
他人に可愛いや綺麗と言われても何も感じないが、普段隣にいる侑一に言われるとちょっと嬉しい。
「やん、これ以上大きくなったら、入らないよ?」
「それは困るな……。早く入れてあげてくれないか」
「ふふ、オッケー」
向き合うようにあぐらをかいた侑一の前に膝立ちになる。侑一の方が輝よりも背が高いから、普段は見下ろすことなんか殆どない。何だか侑一のつむじが可愛いと密かに思った。
侑一のモノを舐めている時から物欲しげにヒクヒクさせていた入り口に、後ろ手に握った侑一の剛直をあてがう。
「あぁ、輝……とろとろだな。奥まで突きたい」
「うん……もうちょっと……んっ」
ちゅくちゅくと入るか入らないかの瀬戸際を攻めるのも気持ちが良くてつい意地悪をしてしまう。
「ぁ……ん、ン、ぅ…アァッ!」
「輝っ」
切羽詰まった呼び声と共にいっそくに突き入れられ、輝は思わず背を逸らした。びゅくびゅくと迸る愛液が侑一の腹を濡らす。
「輝っ、輝っ!俺を試して、悪いやつだ!」
「あっ、アァッ、そ、そんな、つもり、じゃ…ッ」
止まらない激しい突き上げに、輝は我を失い喘ぎ声をあげるしかなかった。
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