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第6話
大学受験を経て、輝と侑一は同じ大学に入学した。
数十年前まではΩ性の進学率は低いものとされてきたが、今は抑制剤の多様性とそれに伴ってΩ性の社会進出が認められてきたから、大学まで進むことはそう珍しいものでは無くなっていた。
合格発表のときは父親も母親も喜んでくれた。
侑一とはお互い自分の家でホームページから合格を確認した後、電話で報告し合った。
その時は二人とも高揚していて、やはり大学まで行き一緒に番号を見ようということになった。
「侑も、実家から通う?高校とは違って通学時間、一時間半って何気にキツイよね」
電車に揺られながら、四月からの新生活を想像する。家から通うには、電車を乗り継いで行かなければならない。さらに、最寄駅から大学までは徒歩で十五分。第一志望に合格できたのは本当に嬉しいが、朝のことを考えると正直億劫に感じてしまうのも本音だ。
「そうだな……輝、俺と住まないか?」
「えっ」
侑一の提案にビックリして、思わず顔を凝視する。冗談で言ったわけではなさそうだ。
「親にも言われているんだ。実家から通うのか、家を借りるか。輝も考えているなら、俺は家を出たい」
確かに、学校の近くに住めるのならそれは理想だ。
「と、とりあえず、俺も親に聞いてみないと」
「そうだよな。輝は俺と住むの、嫌か?」
「嫌じゃない!大学も同じとこ受かって嬉しいし」
一人暮らしであれば不安だが、侑一がいるなら心強い。しかも、Ωは発情期があるが上、部屋を貸してくれない不動産も多いと聞く。だからこそ、実家から通うことしかできないと思い込んでいた。
「じゃあ、今度輝の両親に挨拶に行くから」
とびきりの笑顔で言われて、何故だか照れてしまう。
「あ、挨拶って、結婚じゃないんだからさあ」
茶化すように侑一の肩を強めに叩く。
「そうだけど、『息子さんをください』って言わなきゃな」
それに対して、侑一も冗談っぽく笑った。
後日、本当にうちに挨拶に来て、侑一は「四年間よろしくお願いします」と言って輝の両親に頭を下げた。
幼い頃から知り合いの侑一に、両親は揃って「こちらこそ愚息をよろしく」としんみりした雰囲気で言うものだから、侑一の隣にいた輝は気恥ずかしくなってしまったので、あまり思い出したくはない。
その後、侑一の両親に会いに行ったが拍子抜けするほどスムーズに同居は認められ、あれよあれよと言う間に、今同居している家賃八万2DKのアパートに決まった。
同居が始まってからも、侑一との関係性は変わらず発情期の際は今まで通り体を繋げていたが、一つだけ新たな習慣ができた。
セックスのあと、一つのベッドで朝まで眠るようになった。お互いの部屋にベッドはあるが、何となく行為の後に離れがたく思っていた気持ちが伝わったのか、「このまま寝よう」と言ってくれたのだ。
シングルベッドに男二人が寝るのは狭苦しいが、侑一の匂いに包まれて眠りにつくのは安心を覚える。
食事は基本、どちらかアルバイトの無い方が作ることが暗黙のルールだ。二人ともアルバイトがある日はスーパーやコンビニで惣菜またはお弁当を買って食べることもある。
掃除や洗濯は自分のところは自分で。時々侑一の分までまとめて洗濯することがあるが、その分ゴミ捨てを侑一がやってくれたりと、持ちつ持たれつの関係が出来上がっていた。
幼い頃からの付き合いだから、一緒に暮らしていて全く苦しく無い。むしろ、居心地がいい。
一つだけ、侑一は朝に弱いことがわかったのは他の人には内緒だ。
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