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第11話

 侑一とサークル長の間に、女の先輩が割って入っていくのが目に入る。  明らかに侑一に気があるようで、距離があからさまに近い。 「取られる、って何だよ。侑は俺のものじゃないし……」  そう言いながら、目の前の唐揚げに箸を伸ばす。  俺のものじゃない、と言うものの、つい最近まで隣にいることが当たり前に思っていた。 「素直になってみればいいと思うけどなあ」  店員が飲み物のオーダーを取りに来たことで、話が遮られた。岡本がビール、輝がウーロン茶のおかわりを頼んだ。  それと同時に侑一が隣に戻ってくる。 「輝、それ美味い?」 「うん。侑も食べる?」  侑一の皿に、唐揚げとレモン一切れをのせてやる。  レモンを絞った唐揚げを食べる侑一に、岡本が先程のノートの話をした。 「明日、バイト前に大学に持っていくよ」 「ホント!助かるわぁ。今度学食奢るよ」 「オッケー。あ、やべ。さっきグラス置きっぱなしにして持ってくるの忘れた。輝、それ頂戴」 「ん、いいよ。あとで新しいの頼もう?」  飲んでいたウーロン茶を侑一に渡す。 「……やっぱりさあ、夫婦にしか見えないわ」 「はあ?」 「仲が良いってことだろ」  おじゃま虫だからあっち行くね、と岡本が席を立つ。邪魔では無いし、居ても全然良かったのに。 「先輩と何話してたの?」 「今度テニスサークルに顔を出さないかって。俺が高校のときに怪我したやつの代わりに試合に出たことあったろ?その時に他校にいた先輩が見てたんだってさ」  そんなこともあったね、と思い出す。あれはニ年生の時だ。同じく二年生の部員が怪我をして、ダブルスが組めないかもしれないという状況に、相方が侑一ならできるからと泣きついてきたのだ。  輝も試合を観に行ったが、なんと侑一のペアは決勝まで進んだ。決勝の相手が三年生であったこともあり、あと一歩のところで優勝は逃したが。 「あの時はいいとこまで行ったよね。もう少しで優勝だったし」 「まあな」  その点、自分は運動も勉強も特に秀でたものはないなと思う。侑一は何で一緒にいるんだろう。

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