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第12話
二時間の飲み放題が終わり、会計を済ませた後外に出た。
酔った女の先輩が、しきりに侑一に送ってほしいと強請る。しかし、侑一はそれをにべもなく断った。
「先輩。俺、輝と帰るんで」
あまりにもバッサリと切ってしまう侑一に、輝の方が慌ててしまう。
「侑……別に一人で帰れるよ?」
「俺が輝と帰りたいんだ。夜道は危険だから」
未練がましそうな先輩の視線が痛い。その横で、サークル長が苦笑いしながら助け舟を出した。
「あー、じゃあ大学周辺組はタクシーでみんなで帰ろう」
電車組を見送った後、サークル長とその他数人がタクシーに乗っていく。
侑一と二人きりになって、ほっと息をついた。
侑一も同じく疲れたようで、足取りがいつもよりゆっくりだ。
「あのさ、侑」
沈黙が少し怖くて、なんでもいいからと侑一に話しかけた。
「ん、何?」
「侑は誰かと付き合いたいって思う?」
「突然だな。輝からそんなこと、初めて聞いた」
自分でも思う。そんなこと、聞きたいわけではなかった。
少し思案した後、侑一が口を開く。
「俺には輝がいるし、他の奴のことは考えたこともないな」
「そう……」
どう答えてほしかったのかわからない。でも、胸がざらりと不快になっていくのがわかる。
「輝?疲れたか?」
侑一が怪訝そうに輝の顔を覗き込んでくる。
「なんでも無いよ」
やっぱり、自分が侑一の近くにいすぎて、侑一の弊害になっているのではないか?
そう思わずにはいられなかった。
まだ自宅は遠い。
真夏の夜は風がぬるくて、歩くだけでもじっとりと汗をかく。
途中でコンビニに寄って、アイスを買った。家に着く頃には溶けてしまうから、と行儀悪くも歩きながら食べる。ソーダ味が爽やかだ。
「輝、夏休みの予定は?」
「近いうちに、実家に帰らなきゃだね」
この前帰ったのはゴールデンウィークだった。時折母親にはメッセージを送っているが、やはり夏休みの帰省は楽しみにしているようだ。
「ああ、そうだな。いつ帰る?俺も合わせるわ」
「お盆が近いし、今週中には……」
「わかった」
お盆が終われば、八月下旬は侑一の誕生日がある。
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