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第13話

「もしもし、母さん?夏休みに入ったから明日から帰るね」 『わかったわ。侑一くんは?一緒?』 「えっと、そのことで母さんにしか言えないんだけど……」  なあに、と母親の声が甘くなる。いつまでも息子に頼られることは嬉しいようだ。 「もう発情期はひとりで耐えようと思って」 『……わかったわ。とりあえず帰っておいで』  電話を切った瞬間、安堵のため息が漏れた。母親は何も言わなかったが、きっともう感じ取っているのだろう。 次の日、侑一と実家に帰る電車に乗った。努めて普段通りの態度を取っていたが、それでも侑一には普段と違うことが分かってしまうようだ。  侑一は何か言いたげな表情だったが、輝からは何も告げずに玄関先で別れた。  喧嘩別れをしたわけでもないのに、電車に揺られている間中、胸にしこりがあるかのように重苦しさに苛まれた。 「おかえり、輝」 「母さん、ただいま」  玄関の扉を開けると、母親が迎えてくれた。 「突然帰ってきてごめん」 「何遠慮しているのよ。ここはずっと輝の家なんだから、いつ帰ってきてもいいのよ。お父さんも喜ぶわよ。輝が大学に行ってからやっぱり寂しいみたい」  これはお父さんには内緒ね、と笑う。輝もつられて笑ってしまった。  数ヶ月ぶりに三人で食卓を囲み、輝は大学のことやアパート近くの美味しい店を話した。  父親から「侑一くんは元気か」と聞かれたが、曖昧な返事してしまった。今は侑一のことを考えたくなかった。 「輝、いつまで居られるの?」  夕食後父親が風呂に入っている間、母親が剥いてくれた桃を摘みながら二人で話す。 「うーん、二週間くらいかな。周期的にはあと数日でアレが始まると思うんだけど」 「そうなのね。じゃあ、お墓参りは早めにいかないと」 「迷惑かけてごめん」 「こんなの、迷惑の中に入らないわよ。私が若い頃なんて、もっとタイミング悪かったもの。旅行前とか最悪。自分だけキャンセルよ。悲しいったらありゃしない」 今だから笑い話にできるけどショックだった、と話す母親の顔は本当に悔しそうだ。 「それで?今回は、侑一君呼ばないんでしょ?何かあったのかしら」

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