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第15話

 侑一へは実家に帰ってきてから電話もメッセージも殆どしていない。  発情期に入るまでは少しだけやりとりをしたが、その後は既読のみだ。  一日に一度は安否を尋ねるようなメッセージが届いていたが、返信しなかった。もっとも、返信できるほどの余裕がなかったというのが正しいが。  四、五日が経って、ようやくスマートフォンを手繰り寄せ、侑一に『もう少ししたら帰る』とだけ打った。  日中夜、興奮状態が続いていたせいで今は疲れてとても眠い。抗わずに輝はベッドに沈み込んだ。  いまの輝はやっと発情期を乗り越えた安堵のみに包まれていた。    どれくらい眠っていたのかわからない。深い眠りから引っ張り上げたのは、目覚ましではなく誰かが自分を呼ぶ声だった。  それは、母親でも父親でもなかった。 「輝、輝、大丈夫か?迎えにきたぞ」 「侑……?どうして、ここに」  ぼんやりと侑一を見上げる。何とか発情期を乗り越えた後の気怠さが残っている。  ああ、そういえば眠る前に侑一に連絡したんだった、と思い当たる。 「あのね、ひとりでも発情期頑張れるよ」  だから、侑一には安心してほしい。  侑一に向かって微笑むと、何故だか侑一は傷ついたような顔をした。どうしたのだろう、と何か声をかけるべきか悩んでいる間に、侑一は何か決断したように口を開いた。 「輝、そんなことはどうでもいい。俺たちには話をすることが必要だ」 「話……?」  それきりアパートに着くまで侑一は黙ってしまった。輝も手を引かれるがまま侑一についていくだけだ。  親にアパートに戻ることを伝えてないな、と思ったが険しい顔をしている侑一を前に何も言えなかった。

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