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第16話

「輝、そこ座れ」 「え、あ、うん」  侑一は部屋に帰ってくるなり、輝に二人で買った二人がけのソファに座るよう言った。ラグに座りかけていた輝は大人しく立ち上がり、ソファに腰掛けた。その隣に侑一も座る。 「単刀直入に言うが、輝はもう俺に抱かれたくないか?」  びくり、と輝の体が震える。 「……っ」  侑一は怒っているような、悲しいような眼を輝に向けていた。  ふるふると首を横に振る。 「じゃあ、どうして今回の発情期は俺に頼ってくれなかったんだ」 「……俺が、侑の隣に居過ぎると、迷惑になるだろ」  今まで気づかなくてごめん、と言うと侑一は突然輝の左手をぎゅっと痛いくらいの力で握ってきた。 「迷惑?そんなこと思うはずがない」 「でも、俺が居ると侑に恋人もできなくなるし……」  松坂の言葉が、そして女の先輩の顔が頭によぎる。 「恋人……?俺は輝が好きなのに?」 「俺も侑のこと、好きだけど、親友と恋人は違う……」 「じゃあ、輝が俺の恋人になればいい」  簡単にそんなことを言われてカッと頭に血が昇る。  気づいたら、侑一を目の前に捲し立ててしまっていた。 「Ωは一人しか番を持つことができないけれど、αは違う。俺は侑を失いたくない。だから、恋人じゃなくて親友のままがいい」  涙が出そうになるのを我慢すればするほど頭がガンガンと響くように痛くなる。  このまま侑を失ってしまう恐怖だけが先行して、焦りだけが積もっていった。 「輝は、俺が他のやつを抱いても平気なの?」 「え?」 「輝が言っているのはそういうことだろ」  思ってもみなかった言葉がリフレインする。  侑一が、他の誰かを抱く? 「どうなの?他のやつと番になってもいいの?」  そんなの、嫌だ。  そう思ったら、涙が次から次へと溢れ出してきて、どんどん止められなくなる。侑一の顔が見られない。  自分から言い出したことなのに、いざ侑一が他の人、例えば松坂の言っていた先輩や、サークルの先輩を抱くことを想像しただけで苦しくなる。

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