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第25話

 五歳の時、両親がマイホームを立てたことをきっかけに幼稚園を転園することになった。  環境の変化に戸惑いを隠せず、初登園はひどく緊張していたと思う。  だが、それは輝の存在によって打ち砕かれた。 「きみ、だぁれ?はじめてだね」  先に靴を履き替えていた男の子が不思議そうに侑一に話しかけてきた。一眼見た瞬間、電気が走ったように体が震えたのを感じた。 「おれは、ゆういち」 「じゃあ、ゆうくんだ!ぼく、あきらね」 「あきら……」  ゆうくん、と己の名を呼ぶ目の前の存在が眩しく映る。  何て可愛いのだろう。  欲しい、と本能が告げる。  その気持ちの名前が分からなくとも、輝でアタマがいっぱいだった侑一はその日を境に輝にひっついて回った。  輝が侑一を邪険にすることはなかった。  それどころか、他の人には見せない笑顔を心を開いている侑一のみに見せてくれるので、独占欲は日に日に高まっていく。  しかも家が二軒隣と近いのも最高だった。  小学校に上がってから、毎朝輝を迎えに行き、帰りも必ず輝を先に家に送ってから自分の家に帰った。 放課後もお互いの家を行き来し、門限が来るまで遊び尽くした。  輝が好きな遊びはRPGゲームで、二人でキャラクターを成長させ、何体もの敵を倒していった。侑一にとっては輝と居られれば良いのでどんな遊びでもいいのだが、特段テレビゲームは二人きりで居られる手段であったため輝の趣味には満足だ。  常時、輝を独り占めしている侑一に、嫉妬の声も聞こえてくる時もあったが構うものではない。  幼稚園児の時から女の子に好かれることが多かった侑一は、数々の女の子から「およめさんにしてほしい」と強請られてきた。 「およめさんってなに?」と母親に聞いたところ、「おとなになったときに、一緒にいるって約束よ」と教えられた。 「じゃあ、ぼくのおよめさんはあきらがいい」 「えっ?輝くん?」  始めは母親もビックリしていたが、それ以来ずっと「あきらをおよめさんにする」と言い続けていたところ、母親も感づいたらしい。  息子が、番を見つけてしまったのではないかと。

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