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第33話
両手で輝の顔を挟み、正面を向かせる。
噛みつくように唇を奪い、口を塞いだまま腰を振りたくった。
「んんンッ、ぅ、ぁ……んぅ……」
苦しげに息継ぎをする輝にかまっている余裕などなかった。
「輝、輝……ん……イク」
「出して、出して、俺のナカに……ッ!」
息をつめて、ゴムの中に射精する。手淫のときよりも長く、たっぷりと精を吐き出した。
ハッと気づいて、輝の項を確認し歯形がないことに安堵する。
理性が焼き切れそうなくらい没頭してしまったことが今更怖くなった。
「侑……スゴイね。αとしたらホントに気持ち良くなれて、終わるんだね発情期って」
満たされたのかベッドに沈む輝の声は明るい。
まさか、目の前にいる雄が自分を番にしようとしたなんて露ほども思っていないようだ。
「……ああ、俺もこれほどだとは思わなかった」
Ωの発情期にのまれたαはただの獣だということを、侑一は身を持って知ってしまった。
あの一瞬だけは、自分も獣だった。
理性のあるうちにコンドームをしていたこと、項から少しでも気をそらせるよう飛び散った理性をかき集めて頑張ったことは自分でも褒めたい。
ガバッと輝を抱きしめる。少しびっくりしたようで、輝は侑一の腕の中で硬直した。
「な、何?」
「他のやつに、αだからってヤらせるなよ。しばらくは俺だけにしとけ」
「う、うん。こんなこと侑以外になんて考えられないよ……」
輝の言葉に喜びを感じる一方、自己嫌悪を覚える。
(何だ……しばらくは、って)
「ねえ、俺は侑が初めてだけど、侑は経験あった?」
「あるわけないだろ」
「そうだよねえ。俺、侑の童貞貰っちゃったんだ」
大丈夫だった?と小首を傾げる輝に、目眩を覚える。
大丈夫も何も、初めてが輝でなかったらと考えるとゾッとする。
「お前で良かったよ」
「そお?」
心なしか嬉しそうに笑う輝が愛おしい。
「また発情期になったら俺を頼ってほしい」
「うん、そうする」
この多幸感がまだ続くのかという希望と、いつか終わってしまったらという恐怖がないまぜになって混乱してしまう。
「でも、初めてなのに優しくできなくてごめんな」
「え?」
きょとん、と輝は侑一を見つめた。
「侑は痛いことしなかったよ?キス、しながらの気持ちよかったし……」
ずきゅん、と胸に甘い痛みが広がる。
「それに、侑の匂いって安心できる気がする」
"匂い"
輝も本能で侑一を選んでいる。
独りよがりではないことを確信して、侑一の不安は吹き飛んだ。
「ずっと親友でいてね?」
輝の望みは全て叶えてやる。
だから、あと六年待ち続けられた。
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