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第3章 歪み 06※※

俺がそんな行為をしていた合間にも、亜矢はナカを弄られる刺激によって辛そうに喘いでいた。 思っていたよりも早く、亜矢のスマホのバイブレーション音が鳴った。 通話ボタンを押すとすぐさまあいつの声が聞こえてきた。 『……亜矢ッ?どうし――』 「こんにちは。一ノ瀬結月さん」 一ノ瀬の言葉を遮って、余裕たっぷりに挨拶する。 『っ!お前っ……沙雪か?一体亜矢に、何を……』 あからさまな動揺が可笑しいくらいに心地良い。 「ねえ……一ノ瀬さん」 一息おいて俺は続けた。 「貴方の言ってたこと……亜矢は俺にしか反応しないって……あれ、嘘ですね」 『何言って……』 あいつが電話の向こうでハッと息を呑んだ。 俺の指が前立腺を掠めたのか、亜矢が大きな矯声を上げたからだ。 『亜矢と……何をしている……?』 平静を装っていたが、明らかにその声は怒りに満ちていた。 「何って、貴方が俺に見せてくれた事を、同じようにしているだけですよ」 俺は一ノ瀬に聞こえるように亜矢に呼びかけた。 「亜矢、欲しいだろ?おねだりしてみろよ」 一ノ瀬と通話をしていることなど、俺に背を向け快楽に堕ちている亜矢は知る由もない。 期待していたとおりの言葉が、その口から漏れた。 「して……ください」 「何を?」 「沙雪さんの……いれ、て……」 「名前」 「たか、ひろさんのが……欲しいですっ……」 歓喜に思わず笑みが溢れる。 「よくできた……亜矢」 スマホはわざと通話中のまま、亜矢の口元に放り投げた。 「ひ!っあぁ……っ!!」 高ぶって熱を帯びたモノで後ろから貫き、ドロドロに熱いナカを掻き混ぜながら、喘ぐ亜矢に問いかける。 「亜矢……俺のこと、好き?」 「ん……す、き……」 亜矢はこくこくと涙を散らせながら首を縦に振った。 「もう一度言って。好きだって」 「好き……!好き、だから、もっとっ……」 「もっと、何?」 「ナカ、気持ちよく、して……!」 いい気味だ。電話の向こうのあいつの顔を想像するだけで、ゾクゾクする……。 「お前が俺で()くときの声、あいつに聞かせてやれよ」 細い体に覆い被さり、腰の動きを速めながら、もはや何を言っても聞こえていないであろう、亜矢の耳元でそっと囁いた。   ――この半年、待っていた。亜矢が警戒を解くであろうその時まで。  ずっと聞きたかった。俺に感じて漏らす甘い声を。  ずっと見たかった。この貪欲に満ちた濡れる瞳を、理性の欠片もない乱れた姿を……。

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