55 / 126

第3章 歪み 07

この日、俺は初めて、亜矢のナカに自分の欲を吐き出した。 それは情事を始めてから一度も犯したことのない行為。 これまで守ってきた、亜矢と己に対する尊厳。 それを粉々に打ち砕くように、何度もソコを自分の体液で満たした。 意識を手放した亜矢をそっと横たえて、温めた濡れタオルで全身を丁寧に拭く。 細い両脚に手を伸ばした時、その間を伝う白濁の液が目に入った。 何故か押し寄せてくる、罪悪感と虚しさ。 どうしてこう、人間の心は矛盾しているのだろう。 壊したいほど好きなのに、いつまでも守りたかった自分がいる。 強引にでも手に入れたいと思うくせに、泣き顔だけは見たくなかった自分がいる。 ……ああ、絶望したくなるほど、身勝手だ。 心を鎮めるように長く息を吐く。指先で柔らかな髪を梳いたあと、涙で濡れた頬に触れた。 ――殴られるでも、汚い言葉で(なじ)られるでも、どんな罰であろうと受け入れる。だから。 「俺を怨んでくれ。……お願いだ……」 亜矢の心を支配できるのなら、どんな形でもいい。 亜矢に出会って、生まれて初めて恋というものを自覚した。 その時の感情はもう、歪んでしまったのだから――

ともだちにシェアしよう!