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第4章 再会 10※
「……お前には、似合わない」
千尋兄はそう呟くと、いきなりピアスを外し、シーツの上に放り投げた。
「っ!何す……」
音もなく落ちたそれを急いで拾おうとすると、ぐっと腰を掴まれる。
そのまま四つん這いの状態でベッドの上に倒れた僕に、彼が背後から覆い被さってきた。うなじに熱い息がかかる。
「……抱かせろ」
上着の中に手が滑り込み、胸の突起を指で摘むように強弱をつけて弄られる。
反対の手で下衣を膝まで降ろされ、露わになった太腿や双丘をゆるりと触ったあと、後孔に指が触れた。
「俺が居ない間、どうしてたんだ? 誰かに、可愛がってもらったのか?」
「っ……」
「……ココじゃないと、満足できないもんな?」
冷たい液体がそこに垂れたかと思うと、関節の太い中指が挿入され、縦横無尽に動かされる。荒々しい動きに、反射的に腰が逃げるのを、強く押さえつけられてしまった。
「や、め……!」
「相変わらず、直ぐに柔らかくなるんだな。溶けそうなくらいに熱くて。まぁ、俺がそうしたんだけど」
ヒタと固いモノが当てがわれ、断りもなく解されたそのナカに入ってくる。
手の中のピアスをギュッと握り、目を瞑る。
異物感と熱さが、あの夜の記憶を、打ち寄せる波のように連れてくる。
泣きそうに歪んだ顔、優しく名前を呼ぶ声、震える唇……
――忘れたい。
この人をまた好きになれたら、忘れられる……?
「どうした?声出せよ」
まるで前と同じ。
僕は男に抱かれて、あの人の熱を求めている。
違うのは、帰る場所も、癒やしてくれる存在も、何も無いこと……
――忘れなければ。
早く、この人に壊されたい。早く……
「亜矢、お前……」
千尋兄が動きを止め、僕の肩を掴み、体を反転させた。舐めるように全身を見る。僕のソレ自身をも。
「……お前、まさか……」
彼の言いたいことは嫌でも解った。自分でも解っていた。
確実に、前のカラダとは違っていた。僕は誰の快楽をも受け入れない。ただ一人を除いては……。
「っう……ぅ」
無意識に、頭に残る結月さんの影を消そうとしていた。彼とはまったく違う、千尋兄のことを想うことで恋しい気持ちをすり替えた。
しまい込んでいた過去の恋心を引っ張り出してまでも、消し去りたかった。
それなのに、無情にもカラダは覚えている。結月さんを求めている。
酷いよ。こんなカラダにしておいて。
忘れるなんて、出来ない……。
「あい、たい……」
「……亜矢?」
「結月さんに、会いたい……っ」
――結月さん。あの時、貴方にした約束を、僕は今、破ろうとしている。
貴方を忘れるために、他の人をまた好きになろうとしている。
こんな最低な僕を、貴方はもう、忘れてくれているでしょうか。
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