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第4章 再会 19

一ノ瀬は、その近すぎる距離に対してというよりは、今の言葉が心底理解できないというように狼狽を漂わせた顔で、俺をじっと見つめた。 「どういうことだ……?俺には、何のことか……」 何も知りません、という表情。 それを見て、怒りと落胆の気持ちが織り交ざる。 予想はしていた。この反応をすることは。 こいつは俺の気持ちなんて、微塵も解ってはいなかったのだ。 怒りにまかせて、その唇を奪ってやればいい。 そうすればこいつは気づくのか? ――今更だろ。 。 その欲望の矛先をあいつに向けた。 そして、最も愛してやるべきだったあいつが、あろうことか、自分が一番手に入れたかった男に恋をして、壊された。 亜矢と一ノ瀬を会わせたかったのは、「絶対的な否定」が欲しかったから。 あの“ユヅキ”が別人であることを、この目で確かめて安心したかったから。 こんな偶然、許されない。その一心で。 この事実だけでもありえないのに、まさか同じ言葉で、突き放されたなんて。 何という愚の骨頂……。 「俺たちは、本当に馬鹿だな」 冷笑し、一ノ瀬の右頬に添えていた手を下ろして、そのまま拳を握る。 どうして、同じ傷つけ方しか出来ないんだ。 あれほど純粋な想いを向けられておきながら、どうして大切に出来なかったんだ…… 「……一生許せない。お前も、俺自身も……」 「は、すみ……」 名前を呼ぶ、透き通るようなその声が、亜矢のそれと重なる。 自分が映る深い青から逃れるように、背を向けた。 『僕は千尋兄の何?』 あいつは、何であることを望んで、ああ呟いたのだろう。 あの時何と言えば、間違えずにあいつを愛せたのだろう。 4年もの間、そんな自責の念に囚われ続けていた。 ――“人形”という言葉で、呪いのように亜矢を縛った。 それはあまりにも、残酷な記憶……

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