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第5章 真実(追憶 5 and a half years ago)01

《perspective:千尋》 「一目惚れ」という感覚を覚えたのは、後にも先にもあの時だけだろう。 これまで数人の女と付き合ってきた。 それでも、人に見惚れたのは初めてだった。 まさかその対象が、“大の男”だなんて思いも寄らないことだったが。 今考えれば馬鹿げた話だと思う。しかし、笑えないくらい本気だった。 あれは5年半前の冬が終わる頃、静かな図書館でのこと。 その時はまだ、恋愛感情の伴わないものだったけれど――

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