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第5章 真実 21※※
「っは……ん、んぅ」
献身的に口淫をする亜矢を、俺は何の感情もなく眺めていた。
最初は戸惑いがちに舌で舐め取るようにしていたが、いつの間にか恍惚とした表情で、それを喰い尽くさんばかりに小さい口いっぱいに頬張っている。
亜矢の瞳が情欲を帯びる毎に、憤りがつのった。
――無理矢理させてんのに、悦 んでるんじゃねえよ。
「もういい……あいつは、そんな顔しない」
ぐっと顎を掴んで口を離させ、唸るように言うと、細い肩が僅かに揺れた。
「あいつ……って誰?」
「……」
「……千尋兄のこと、はすみって呼んでる人?」
亜矢は押し黙る俺を見つめてから、どこか悟ったように視線を落とした。
「僕は、千尋兄の何?」
何かを祈るような、それであって何かを覚悟しているような、小さな声。
俯いたままの亜矢を一瞥し、吐き捨てるように告げる。
「人形だよ」
ギシリとスプリングが大きな音を立てる。
倒れ込んだ亜矢の身体に後ろから覆いかぶさりながら、ベッドサイドに置いたハンドクリームのチューブを右手で取って、指先にたっぷりとクリームを馴染ませる。そのまま固く閉じた秘部をなぞるように触れた。
「っ!そこ……嫌、だ……」
これから何をされるか、分かっているはずもないのに、身体は本能的に拒絶しているようだった。
暴れる下半身にさらに体重をかけて、解れてもいないであろうそこに中指を挿入した。
「!ぃっ……」
息を呑むのが気配で分かる。痛みと今までにない感覚に、混乱しているのだろう。
「やっ、ちひ、……痛、からっ……やめて……」
亜矢は苦しそうに短い息を吐き、声を絞り出すように抵抗した。
「お前、何をされてもいいって、言ったよな」
二本の指でグチュグチュと音を立ててナカを嬲りながら、耳元で低く囁く。
「俺のことが、好きなんだろ?」
好きだなんて、簡単に口にするこいつにむかつく。
所構わず愛を向けるのも、無邪気に俺を求めるのも、幸せそうに笑う顔も、全部、全部、むかつく……。
「っひ……ッ!」
気がつけば、細い身体を貫いていた。
背を仰け反らせ、涙を左右に散らす。もう制止する言葉すら投げかけることもできない、嗚咽混じりの浅い呼吸だけが聞こえてきた。
「ぃ、ッア……あ、あ……!」
振り乱す亜矢の長い髪が、頬を掠める。
芳香と滑らかな質感が、無情にも一ノ瀬を思い出させてじりじりと胸を焦がす。全身に纏わりつくような欲望をどうすることもできず、無我夢中で腰を打ち付けた。
「いつもみたいに、言え」
「ん、っは……は、すみ……」
「もっと呼べよ」
いつも頭の中に浮かび上がる一ノ瀬は、陵辱されて抗う姿だった。今の亜矢のように。
――ああ、そうだ。初めから、手に入らないことを知っていた……
激しい律動の中で、亜矢はふっと意識を手放した。
ぐったりと力が抜けた身体を労るように抱き締めた後、ゆっくりとベッドの上に横たえる。汗ばんで首に張り付いた髪を優しく梳くと、真っ白なうなじが露わになった。
それを見た瞬間、ある情景が脳内に蘇る。
あの日、あの場所で、あいつが無防備な姿を晒していなければ。あの髪に触れていなければ。
壊すことはなかったのだろうか。すべてを。
「ゆ、づき……結月……」
一度も呼ぶことができなかった、その名前。
発すると同時に再び熱が迫り上がり、掌の中に自分の欲を吐き出した。
俺はあいつが好きだった。
こんなにも、狂ってしまうほど……ーー
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