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第9-2話ゴブリンの根城へ
低く濁ったざわめき。ゲゲゲッ、というくぐもった蛙の鳴き声にも似た笑いも混じっている。
嫌な予感がしてグリオスは肘を立てて上体を起こす。
大きく尖った耳。鋭く真っ黒な目。耳近くまで避けた口。全身は茶色く胴体は肉付きは良いが、手足は細く、その腹は丸々としている――典型的なゴブリンだ。
それが大小様々な個体が集まり、一斉にグリオスを見ていた。
「ゴブリンの根城だったか……っ!」
剣を抜こうとした矢先、ゴブリンたちが次々と跳躍してグリオスに襲いかかる。
一匹が右手を、もう一匹が左手を――役割が決まっているかのようにゴブリンたちはグリオスの四肢を抑え、身動きを取れなくしていく。
「離せ! ……うわっ!」
どうにか身をよじってグリオスがゴブリンの拘束から逃れようと足掻いていると、不意にバシャッと液体をかけられる。
あっという間に全身がネバネバの液に塗れ、かすかに甘い匂いがグリオスを包む。
息をする度に匂いは濃さを増し、次第に頭が朦朧とするほどの強く甘ったるい匂いへと変わっていく。
力が抜けていく。体が熱い。
ぐったりして抗えなくなった頃、ゴブリンたちはゲヘゲヘと笑いながらグリオスを解放する。
そして一様に嬉々とした顔でグリオスを見下ろした。
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