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第14-2話嫌な予感しかしない
選ぶ道は一択だとグリオスは結論を崩さない。ただ、
「触手の森かぁー。なんだか楽しそうな響き……行くしかないよねーグリオス」
店主がいることも気にせず、エルジュは頬を赤く染めながら悦楽の笑みを浮かべ、隣のグリオスへ流し目を向ける。
明らかに欲情した気配。艶めかしい視線から溢れる色気に店主が見惚れてしまっている。
エルジュの美しさは男女問わずに色を覚えてしまうほど。そこへ誘うような目を向けられたなら、他の者ならその色香に抗えず関係を持とうとしてしまう。
しかし長年エルジュとともに居続けているグリオスには、まったく効かなかった。
心はビクともせず、呆れた息を吐き出してからエルジュを睨む。
「確かに行くしかないが、余計なことはするなよ? 寄り道せずに森を突っ切るぞ」
「分かってるよ、もちろんそのつもり。だけど……森を出た後にご褒美が欲しいなあ。真面目にやった分だけグリオスからご褒美。どう?」
性的な雰囲気を漂わせながらの台詞。エルジュが行為を強請っていることを察した店主は、「き、気を付けてくれよ」と離れてくれた。
思わずカッと顔を赤くしながら、グリオスは小声で怒鳴る。
「人前で堂々と強請るな……っ。お前には恥じらいというものがないのか? 頼むから人目を気にしてくれ」
「はーい、分かりましたー。で、ご褒美くれるの?」
「……森の魔物のワナにかかろうとしなかったら、考えてやる」
「やったぁ! オレ、良い子に我慢する。さっさと森を抜けていっぱいヤろう!」
もう淫らなことしか頭にないエルジュを目の当たりにしながら、グリオスは目を据わらせながら手元のパンを食べるしかなかった。
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