35 / 100

第16-1話いつもと違うエルジュ

「エルジュ、危な――」 「うん大丈夫。分かってるよー」  一切振り向きもせず、エルジュは右手を上げて光を放つ。  ピュンッ――ジュウゥゥゥ……。  光に当たった瞬間、蠢いた何かは瞬く間に煙となって消滅した。  ……エルジュがまともに反応した。  思わずグリオスが目を丸くしていると、エルジュは得意げに胸を張った。 「本気を出せばこれぐらい楽勝だから。その気になれば光の結界を張って、森に巣食ってる魔物ごと消滅させてもいいんだけれど、さすがに疲れるし、そんな時に襲われたらちょっと危ないからねー。確実にグリオスとエッチするための手段を選ばせてもらうよ」  珍しく顔をキリリと引き締め、真面目な口調でエルジュが語ってくる。  こんなに真剣な顔をするのはいつぐらいだろうかと思いながらも、その理由が自分と寝たいからだとは……とグリオスの目が遠くなった。  もっと早くにこの体をエサにして、しっかり魔物退治をさせたほうが良かったのか? いや、でも普通にエルジュの相手をしていたら身も心も持たない。絶倫のコイツを満足させようと思ったら、魔物からのいかがわしいワナにかからなければ付き合いきれない。  腕を組んで考え込みながらグリオスは歩みを再開する。その隣でエルジュは相貌を崩し、軽やかな足取りで道を進んでいった。

ともだちにシェアしよう!