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第24-2話身に起きている異変

「魔性、だと?」 「目障りな光の加護を宿した勇者を堕とすための種を、庇ったお前が代わりに宿しているのだよ。勇者の精でいくらかは中和されているが、そろそろ間に合わなくなってきている。自覚がないとは言わせんぞ?」  出まかせを……と跳ねのける言葉を放てない。  インキュバスの背後で流れ続ける昨日の光景の夢が、グリオスにそれが真実なのだと突き付けてくる。  ローバーの体液の効果が消えた後も、ずっと体が疼いて、乱れる自分を止められなかった。  寝ても覚めても終わらない行為に歓喜して、中で放たれる熱に酔いしれ、無骨な体を貪るエルジュの恍惚の笑みに胸が昂り――自分が自分でなくなっていた。  もしインキュバスの言う通りならば、間もなく自分が魔に染まり、普段通りにエルジュが抱けば魔に堕ちてしまう。  グリオスの足が一歩下がる。  気圧されていることを自覚させられ、思わずギリリと奥歯を強く噛み締める。  しかし動揺を抑えてグリオスは心を立て直す。 「ご丁寧にわざわざそれを教えに来たのか? 魔王の下僕が、主を倒されまいと俺たちを惑わしにきたのだろうが、俺は魔の者に耳を傾けはしない」 「それは残念な誤解をしているな。俺は確かに魔王の配下ではあるが、命を捧げる気はない。ただお前が美味なる欲に身を焦がし、芳しい匂いを放っておったから引き寄せられただけだ」

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