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第25-2話抗えぬ誘い
「魔物のお前の言葉をそのまま信じろと? 何を証拠に断言する?」
「今、倒すべき存在のはずの俺を突き離せぬことが証拠だ。それに唇が薄く開いて、俺の口付けを欲しているぞ? 堪え性のない淫らでいやらしい体になってしまったものだな、グリオス」
反論したいのに体の奥は確かに疼きを覚え、激しく乱れたいとグリオスに訴えてくる。
昨日まであれだけ濃厚にエルジュと交わったのに、こんなにも快楽を欲してしまう――エルジュの性欲を上回ってしまったら最後、人を止めてしまう気がしてならなかった。
もう自分は元に戻ることはできない。
それならこの魔王討伐を終えるまで誤魔化し続け、エルジュを道連れにする前に姿を消すべきだ。
グリオスの心がインキュバスの提案に傾いていく。
呼吸が浅くなっていく。かすかに唇を撫でてくる吐息に気が狂いそうになる。
きっと夢の中でこの魔物を受け入れてしまえば、エルジュに抱いてしまった欲情を消してくれるほどの快楽を与えてくれる予感に、熱い息を零しそうになる。
絶対にエルジュを堕としたくない。
だからこの誘いに乗ることは裏切りではない。
……もう楽になってしまえたなら……いや、これは罠だ……しかし――。
取り留めなくグリオスの思考が巡る。
そして自然にポロリ、と口から答えが出てしまった。
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